HEALTH WORDS / 用語解説
発生期
発生期とは、受精から胎児期に至るまでの個体発生における初期の期間を指し、一般的に受精卵が卵割を経て胚となり、主要な器官原基が形成されるまでの過程を含んでいる。1 生物学および医学の分野において、この時期は細胞分裂、細胞分化、形態形成が極めてダイナミックに進行する重要なターニングポイントとして位置づけられている。2
受精によって生じた受精卵は、卵割と呼ばれる急速な細胞分裂を繰り返しながら子宮へと移動する。1 卵割が進むにつれて桑実胚を経て胚盤胞へと形態を変え、やがて着床が起こることで母体との本格的な生理的な繋がりが構築される。2 着床後の胚は、外胚葉、中胚葉、内胚葉という三つの基本的な胚葉へと分化する原腸胚形成のプロセスを迎える。1 これら三つの胚葉は、その後の器官形成期において、それぞれの組織や器官へとさらに専門的な分化を遂げることとなる。2
例えば、最外層に位置する外胚葉からは、表皮や神経系などの組織が分化する。1 中間層である中胚葉からは、骨格、筋肉、循環器系、泌尿生殖器系などが形成される。2 そして、最内層の内胚葉からは、消化管や呼吸器系などの内部器官の上皮組織が発達する。1 このように、発生期の初期段階における精密な細胞の配置転換と遺伝子発現のコントロールは、正常な個体の形態と機能を担保するために不可欠である。2
ヒトの胚においては、受精後から妊娠8週末(器官形成期の終了まで)までの期間が発生期の本丸とされ、この時期に形態異常を引き起こす催奇形因子への感受性が最も高くなることが知られている。1 薬剤や放射線、あるいは感染症などの外的要因がこの時期に作用すると、不可逆的な構造異常や機能障害につながるリスクがあるため、周産期医学や公衆衛生学の領域でも厳重な注意が払われている。2 発生期のメカニズムを分子レベルで解明することは、先天性疾患の原因究明や再生医療における幹細胞の分化制御技術の応用など、現代の最先端医学において極めて重要な課題となっている。1