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HEALTH WORDS / 用語解説

祖先遺伝子

ancestral gene

祖先遺伝子とは、進化の過程において、現代の複数の遺伝子やゲノム領域が分岐・複製するもととなった、過去の生物種が保有していた遺伝子のことである。1

生物の進化においては、ゲノムサイズの拡大や遺伝子ファミリーの形成が重要な役割を果たしてきた。 これらの現象の多くは、祖先遺伝子の遺伝子重複(gene duplication)に起因している。 単一の祖先遺伝子が複製されることで、同じ遺伝子のコピーがゲノム上に複数生じることになり、一方が元の機能を維持する一方で、もう一方が新たな変異を獲得することが可能となる。 このような変異の蓄積により、新しい機能や表現型を生み出すネオファンクショナライゼーション(新機能化)や、元の機能が複数の遺伝子に分担されるサブファンクショナライゼーション(亜機能化)といった進化的プロセスが進行する。2

多くの種間における相同遺伝子(オーソログやパラログ)の解析を進める上でも、祖先遺伝子の推定は極めて重要な基盤となる。 現代のバイオインフォマティクスや分子系統学の分野では、多様な生物種から得られた現生遺伝子の塩基配列やアミノ酸配列データをもとに、最尤法やベイズ法などの系統樹推定アルゴリズムを用いて、仮想的な祖先遺伝子の配列を復元する「祖先配列再構築(ancestral sequence reconstruction)」という手法が広く用いられている。 この手法により、数千万年あるいは数億年前の過去に存在していたとされる祖先遺伝子の配列やタンパク質の立体構造、さらにはその生化学的機能を実験的に再現し、進化の道筋を詳細に検証することが可能となっている。3

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002047391850117 ↩
  2. 国立遺伝学研究所 遺伝学辞典: https://www.nig.ac.jp/color/genetics/genetics_22.html ↩
  3. 東京大学 大学院理学系研究科・理学部: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2023/8357/ ↩