HEALTH WORDS / 用語解説
細胞成長因子
Cell Growth Factor
細胞成長因子とは、特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の総称であり、サイトカインの一種としても分類される生体内生理活性物質である。1
細胞成長因子は、多細胞生物において細胞同士が情報伝達を行うための重要な分子であり、生体の恒常性維持や組織の発生、創傷治癒などの多様な生理機能において中心的な役割を果たしている。2
多くの細胞成長因子は、標的となる細胞の細胞膜上に存在する特異的な受容体(レセプター)に結合することによってその作用を発揮する。1
この受容体との結合をきっかけとして、細胞内部へシグナル伝達が引き起こされ、遺伝子発現の調節や細胞周期の進行が促される結果、細胞の増殖や分化が誘導される仕組みになっている。2
細胞成長因子には数多くの種類が存在し、それぞれが作用する細胞の種類や引き起こす反応において特異性を持っている。1
代表的な細胞成長因子としては、表皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)などが広く知られている。2
例えば、血管内皮細胞成長因子(VEGF)は、血管の新生を強力に促進する作用を持っており、組織の修復や腫瘍の成長といったプロセスにおいて極めて重要な働きを担っている。1
また、線維芽細胞成長因子(FGF)は、皮膚や骨、血管などの組織の修復や再生、さらには初期の個体発生の過程において中心的な役割を果たしていることが明らかにされている。2
このように、細胞成長因子は生体の治癒機序や再生医療の分野において欠かせない要素であり、創傷の治癒を早める治療薬や、組織工学を用いた再生医療における培養液の成分などへの応用研究が進められている。1
一方で、細胞成長因子とその受容体を介したシグナル伝達系の異常な活性化は、細胞の無秩序な増殖を引き起こす原因となり得る。2
そのため、がんの発生や進展、転移のメカニズムにおいても、細胞成長因子の過剰な働きや受容体の変異が深く関与していることが多く、これらを標的とした分子標的薬の開発など、腫瘍学の分野における重要な研究対象ともなっている。1