HEALTH WORDS / 用語解説
膵島アミロイド
Islet amyloid
膵島アミロイドとは、膵臓のランゲルハンス島(膵島)において、アミロイドと呼ばれる不溶性の線維状タンパク質が異常沈着したものである。1
2型糖尿病の病態において特徴的な所見の一つであり、長期経過した患者の膵島や血管壁周辺に高頻度で観察される。1
膵島アミロイドを構成する主たるタンパク質成分は、アミラーゼではなくアミリン(別名:IAPP: Islet Amyloid Polypeptide)と呼ばれるペプチドホルモンである。1
アミリンは、膵臓のベータ細胞(β細胞)においてインスリンとともに合成され、分泌されるホルモンであり、血糖値の調節や胃の排出抑制、満腹感の誘導などに関与している生理活性物質である。1
通常の状態では、アミリンは水溶性の monomers(単量体)として存在し分泌されるが、2型糖尿病の発症過程やインスリン抵抗性が持続する状況下などにおいては、アミリンの産生量や細胞内濃度が過剰に増加する。1
高濃度となったアミリンは異常なコンフォメーション変化を起こし、中間体を経てβシート構造を主とする不溶性の線維状アミロイドへと重合・沈着していく。1
この膵島アミロイドの形成と蓄積は、膵島の構造的破綻を引き起こす要因となる。1
蓄積が進行するにつれて、インスリンを産生・分泌するベータ細胞に対して直接的な細胞毒性を示し、細胞死(アポトーシスなど)を誘導することが知られている。1
ベータ細胞の数が減少し、インスリン分泌能が低下あるいは枯渇することにより、2型糖尿病の病態がさらに悪化・進行するという悪循環が形成される。1
病理学的検査においては、組織標本に対してコンゴーレッド染色を行い、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すことや、チオフラビンSなどの蛍光色素を用いることで膵島アミロイドの存在を確認することができる。2
近年の医学および生物学の研究においては、アミリンの凝集メカニズムの解明や、アミロイド形成を阻害する化合物の探索など、2型糖尿病に対する新しい治療法や予防法の開発に向けた基礎的・臨床的研究が進められている。2