HEALTH WORDS / 用語解説
高速液体クロマトグラフィー
High Performance Liquid Chromatography
高速液体クロマトグラフィーとは、液クロあるいはHPLCとも呼ばれ、液体の移動相を用いて試料を分離・分析するクロマトグラフィーの一種である。液体クロマトグラフィーの分離効率と分析速度を飛躍的に向上させた手法であり、現代の分析化学や生化学、分子生物学、医学分野において不可欠な機器分析の基盤技術となっている。1
基本的な原理は、固定相を詰めたカラムと呼ばれる管の中に、溶離液である移動相を高圧力で送液し、その中に試料を注入することによって行われる。試料に含まれる各成分は、固定相と移動相に対する親和性(分配係数や吸着・脱着の度合いなど)の差によって移動速度が異なるため、カラムの内部で時間差をもって分離されていく。分離された各成分はカラムの出口に接続された検出器によって順次検出され、クロマトグラムとして記録される。1
従来の液体クロマトグラフィーと比較して最大の特徴は、充填剤として極めて微細な粒子を使用する点にある。微細な粒子を用いることで理論段数が増加し分離能が著しく向上する一方で、流路における抵抗(圧力)が非常に大きくなる。そのため、高圧に耐えうる頑健な送液ポンプシステムが必須となり、これが「高速」かつ「高精度」な分離を可能にする要因となっている。1
医学および生物学の領域においては、生体試料中の微量成分の定量および定性に広く応用されている。血漿や尿などの体液に含まれるアミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、ホルモン、ビタミン、さらには投与された薬物やその代謝物の血中濃度測定などに用いられる。臨床検査の現場では、糖尿病の診断や血糖コントロールの指標とされるヘモグロビンA1cの測定などにも標準的な分析法として利用されている。2
固定相と移動相の極性の組み合わせや分離のモードによって、いくつかの手法に分類される。代表的なものとして、固定相が非極性で移動相が極性溶媒である逆相クロマトグラフィー、逆相とは逆に極性の固定相を用いる順相クロマトグラフィー、分子の大きさ(サイズ)によって分離を行うゲルろ過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)、電荷を利用するイオン交換クロマトグラフィーなどがある。これにより、低分子化合物から高分子生体物質まで、極めて多様な対象の分離・精製が可能となっている。2
また、近年では検出器として質量分析計(MS)を直結したLC-MSやLC-MS/MSシステムが高度に普及している。これにより、従来の光学検出器では識別が困難であった極微量な生体分子や薬物代謝物についても、高い選択性と高感度をもって同定および定量することが可能となった。プロテオミクスやメタボロミクスといった網羅的解析(オミクス解析)においても、中心的な分離分析手法として駆使されている。1
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906060130987346 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201007011985958252 ↩1 ↩2