HEALTH WORDS / 用語解説
5'末端キャップ構造の付加
5'-capping
5'末端キャップ構造の付加とは、真核生物のRNAポリメラーゼIIによって転写された前駆体mRNAの5'末端に、特殊なグアニンヌクレオチドが逆向きに結合する修飾反応のことである。1
この構造は生物学的には7-メチルグアノシンが5'-5'三リン酸結合を介してmRNAの先頭に付加されたものであり、一般に5'キャップと呼ばれる。2
真核生物の遺伝子発現において、タンパク質をコードする前駆体mRNAは核内での転写の初期段階、すなわち合成が始まって20から30ヌクレオチド程度に達した極めて早いタイミングでこのcappingを受ける。3
まずRNA 5'-トリホスファターゼという酵素が前駆体mRNAの5'末端のリン酸基を一つ取り除いて二リン酸状態にし、次にRNAガニルトランスフェラーゼがGTPからGMPをその末端に転移させることで5'-5'三リン酸結合を形成する。1
さらに、(グアニン-N7-)-メチルトランスフェラーゼなどのメチル化酵素が働いて、付加されたグアニンのN7位をS-アデノシルメチオニンをメチル基供与体としてメチル化することで、成熟した5'キャップ構造が完成する。1
このようにして形成されたキャップ構造は、細胞内において極めて重要な役割を担っている。2
第一に、細胞質へ輸送されたmRNAが5'エキソヌクレアーゼなどの核酸分解酵素による攻撃を受けて分解されるのを防ぎ、分子種の安定性を飛躍的に高める保護機能を持つ。2
第二に、真核生物の翻訳開始のプロセスにおいて、リボソームがmRNAを認識し、翻訳を開始するための目印として機能する。2
キャップ結合タンパク質複合体は核内でこの構造に結合し、mRNAの適正なスプライシングや核外輸送を助けたのち、細胞質での翻訳開始因子との置換を経て、タンパク質合成の効率を直接的に調節する。1
このように、5'末端キャップ構造の付加は、遺伝情報が正確に翻訳されるために不可欠なRNAプロセシングの主要なステップの一つである。2
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906059430932021 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- NBDCヒトデータベース: https://humandb.biosciencedbc.jp/glossary/5-prime-cap ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- Anatomy Physiology: https://openstax.org/books/anatomy-and-physiology/pages/3-3-the-central-dogma-dna-code-to-the-central-dogma-of-molecular-biology ↩