HEALTH WORDS / 用語解説
DAP12
DNAX activation protein 12
DAP12とは、免疫系や神経系の細胞表面に発現し、シグナル伝達を担う重要な膜タンパク質である。1 造血細胞をはじめとする多様な細胞において、受容体と複合体を形成して活性化シグナルを細胞内へと伝達する機能を持つ。2
分子構造としては、非常に短い細胞外ドメインと膜貫通領域、そして細胞質側にITAM(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif:免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ)と呼ばれる特徴的なアミノ酸配列モジュールを有している。3 このITAM内のチロシン残基がリン酸化されることで、SykやZAP-70といったチロシンキナーゼがリクルートされ、下流のシグナル伝達経路が強力に活性化される仕組みとなっている。4
免疫学の領域において、DAP12はNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やマクロファージ、樹状細胞などの自然免疫に関与する様々な受容体(キラー細胞免疫グロブリン様受容体やTREM-2など)の共役分子として機能している。5 これらの受容体がリガンドを認識すると、DAP12を介したシグナルによって細胞の活性化、サイトカインの産生、あるいは標的細胞の細胞傷害が引き起こされる。6
一方で、DAP12は抑制性シグナルを調節する機能も併せ持っており、免疫応答のバランスを保つ上で不可欠な役割を果たしている。7 遺伝子変異や機能異常が生じた場合には、免疫不全や神経変性疾患など、様々な疾患の発症に関与することが知られている。8 特に、ヒトにおけるDAP12遺伝子やその共役受容体であるTREM2の変異は、骨の異常と中枢神経系の変性を伴う Nasu-Hakola病(多発性嚢胞性骨異形成症を伴う脳白質脳症)の原因となることが明らかにされている。9 このように、DAP12は免疫系と神経系のクロストークを理解する上でも、極めて重要な分子として医学および生物学の研究対象となっている。10
参考文献・出典
- Immunology: https://www.jimmunol.org/content/168/1/6 ↩
- JEM: https://rupress.org/jem/article/197/8/935/51842/DAP12-signaling-in-immune-and-non-immune-cells ↩
- Nature Immunology: https://www.nature.com/articles/ni754 ↩
- Molecular and Cellular Biology: https://mcb.asm.org/content/22/13/4553 ↩
- Nature Reviews Immunology: https://www.nature.com/articles/nri1114 ↩
- Blood: https://ashpublications.org/blood/article/103/10/3722/107775/DAP12-and-FcR-gamma-chain-expression-are ↩
- The Journal of Immunology: https://www.jimmunol.org/content/173/7/4267 ↩
- Nature Genetics: https://www.nature.com/articles/ng1001-152 ↩
- The New England Journal of Medicine: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa012780 ↩
- Trends in Immunology: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S147149060300262X ↩