HEALTH WORDS / 用語解説
Hsp90
Heat shock protein 90
Hsp90とは、細胞が熱ショックなどのストレスを受けた際に発現が誘導されるシャペロンであり、多様なタンパク質の高次構造形成や安定化、活性制御に深く関与する分子シャペロンの一種である。1
Hsp90は真核生物から原核生物まで広く保存されているタンパク質であり、細胞内のタンパク質総量の数パーセントを占めるほど豊富に存在する分子シャペロンである。2
正常な生理的条件下においても恒常的に発現しており、細胞周期の進行、シグナル伝達、アポトーシスの制御など、生命維持に不可欠な多くの細胞内プロセスに関与している。2
Hsp90は、その機能を発揮する過程においてATPの結合と加水分解を伴うダイナミックな構造変化を行っており、このATPase活性がシャペロン機能の本質的な駆動源となっている。1
基質となる標的タンパク質にはキナーゼやホルモン受容体などが多く含まれており、これらが機能的な立体構造をとるための最終的なフォールディングや品質管理を担っている。2
また、Hsp90は単独で機能するのではなく、コシャペロンと呼ばれる多様な補助タンパク質と協調して複合体を形成し、それぞれの基質に応じた特異的な制御機構を実現している。2
近年の分子生物学および医学研究においては、Hsp90が多くのがん遺伝子産物やシグナル伝達分子の安定性を維持していることから、悪性腫瘍の増殖や生存に深く寄与していることが明らかにされている。2
そのため、Hsp90の機能を特異的に阻害する阻害剤は、がん治療薬の有望な分子標的として位置づけられており、これまでに数多くの化合物を用いた臨床試験や前臨床試験が精力的に実施されてきた。2
加えて、Hsp90は神経変性疾患などのタンパク質凝集病においても、異常なタンパク質の蓄積を防ぐ防御機構として機能する可能性が指摘されており、創薬ターゲットとしての重要性がさらに高まっている。2