HEALTH WORDS / 用語解説
L929
L929 cell
L929とは、1948年にW.R. Earleらによって樹立された、マウスの線維芽細胞由来の株化細胞(細胞株)である。1
L929は、正常なC3H/An株マウスの皮下結合組織に由来する線維芽細胞を長期間の培養に付すことによって確立された世界的に最も古い株化細胞の一つとして知られている。2
形態学的には紡錘形を呈し、付着依存性の増殖特性を示す。1
L929細胞は、その樹立の歴史において、継続的な継代培養や発がん物質の添加などが行われた結果、不死化および形質転換を経験しており、異種移植によって腫瘍を形成する悪性腫瘍としての性質を帯びている。2
こうした高い増殖性と均一な細胞集団としての扱いやすさから、L929は分子生物学、細胞生物学、毒性学などの幅広い研究分野において、標準的なモデル細胞として広く採用されてきた。2
特に腫瘍壊死因子(TNF-alpha)の生物学的活性を測定するためのバイオアッセイ系において、TNF感受性細胞としてL929が頻繁に利用される。3
また、医療機器や化学物質の安全性評価および生体適合性を調べるための細胞毒性試験(インビトロ試験)においても、その標準株としてISO等の国際規格や公的ガイドラインで推奨されている。4
遺伝子導入やウイルス学の研究、さらには細胞死(アポトーシスやネクロトーシスなど)のシグナル伝達経路を解析するための実験系にも不可欠な細胞として利用されている。2
長年の継代に伴う遺伝的安定性の変動やマイコプラズマなどの微生物汚染のリスクが存在するため、実験の再現性を確保する上では、適切な品質管理とストック管理が極めて重要となる細胞株である。1
参考文献・出典
- Cellosaurus: https://cellosaurus.org/CVCL_0462 ↩1 ↩2 ↩3
- PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18857474/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- Cytokine: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S104346660800624X ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/zen/iso/10993-5.html ↩