HEALTH WORDS / 用語解説
RNF213
RNF213
RNF213とは、もやもや病の主要な遺伝子座である13q染色体上に存在し、巨大なタンパク質をコードする遺伝子である。1 もやもや病は、脳血管の主幹動脈が狭窄または閉塞し、その周囲に異常な血管網(もやもや血管)が発達する疾患であり、脳出血や脳梗塞を引き起こす原因となる。2
RNF213はジンクフィンガードメインとAAA+ ATPaseドメインを持つユビキチンリガーゼの一種であり、細胞内でのタンパク質の代謝やシグナル伝達、さらに血管新生や免疫応答など多様な生理的・病理的プロセスに関与していると考えられている。3 東アジア人集団において、RNF213の特定の遺伝子多型であるp.R4810K(c.14576G>A)が、もやもや病の強い感受性因子であることが見出された。1 このp.R4810K変異を持つ保因者は、非保因者に比べて極めて高いオッズ比でもやもや病を発症するリスクが上昇することが複数の遺伝統計学的解析およびゲノムワイド関連解析(GWAS)によって明らかにされている。4
しかしながら、p.R4810K変異を持つすべての人がもやもや病を発症するわけではなく、保因者におけるペネトランス(浸透率)は低いことが知られている。2 このことは、RNF213の遺伝的変異という単一の要因だけではなく、環境要因やその他の修飾遺伝子など二次的な要因が発症に関与していることを強く示唆している。3 基礎医学および分子生物学的研究においては、RNF213のノックアウトマウスやモデル動物を用いた解析が進められており、内皮細胞の機能異常や血管平滑筋の動態、低酸素応答に対する細胞応答などにおけるRNF213の役割の解明が試みられている。4
さらに、RNF213はもやもや病のみならず、頭蓋内血管狭窄症や肺高血圧症、冠動脈疾患などの他の心血管疾患や、一部の免疫関連疾患との関連性についても研究の対象となっている。3 近年の研究では、RNF213がリポ多糖(LPS)に対する応答や自然免疫、さらには脂質代謝や脂肪滴の形成にも関与していることが報告されており、血管病変の形成機序との関連性が多角的に議論されている。3 このように、RNF213は脳血管障害の病態解明や将来的な遺伝子診断、早期発見、さらには新規治療法の開発に向けた重要な標的分子として、世界中で精力的な研究が続けられている。1
参考文献・出典
- 日本人におけるもやもや病原因遺伝子RNF213の同定: https://www.jstage.jst.go.jp/article/tna/2/1/2_2_18/_article/-char/ja/ ↩1 ↩2 ↩3
- Moyamoya disease: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK557659/ ↩1 ↩2
- The Ring Finger Protein 213 (RNF213): https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6469035/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- Genome-wide association study identifies RNF213 as the first risk gene for moyamoya disease: https://www.nature.com/articles/ng.637 ↩1 ↩2