HEALTH WORDS / 用語解説
TRBP
TRBPとは、ヒトにおけるTAR RNA結合タンパク質(TAR RNA-binding protein)の略称であり、主としてHIV-1のウイルスRNAに結合する細胞内タンパク質として発見された因子である。1
TRBPは、ヒト遺伝子名としてはTARBP2としてコードされており、プロテインキナーゼR(PKR)の活性を阻害する機能を持つことや、RNA干渉(RNAi)の経路において中心的な役割を果たす酵素であるDicerと結合し、マイクロRNA(miRNA)やsiRNAの生合成を制御することが知られている。2
分子生物学的な構造として、TRBPは複数の二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)を保持しており、これにより二本鎖RNA構造をとる核酸分子を特異的に認識して結合する能力を有する。3
HIV-1の感染プロセスにおいては、ウイルス由来のTAR(Trans-activation response element)配列に結合し、ウイルスの複製や遺伝子発現の調節に関与していることが研究により示されている。1
また、TRBPはDicerだけでなく、Argonaute(AGO)タンパク質とも相互作用を形成し、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)の形成や活性化の過程において補助的な分子として機能している。2
細胞内におけるmiRNAの生成異常やRNA干渉機構の破綻は、さまざまな疾患の発症や進展に関連すると考えられており、TRBPの機能不全や発現量の変動はがんなどの病態にも影響を及ぼす可能性が指摘されている。3
このように、TRBPはウイルス感染症の制御機構と真核生物の遺伝子発現制御メカニズムの双方において、極めて重要な役割を担う分子として解析が進められている。1
参考文献・出典
- NCBI Gene: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6895 ↩1 ↩2 ↩3
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q15633/entry ↩1 ↩2
- NCBI PubChem: https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/gene/TARBP2-human ↩1 ↩2