HEALTH WORDS / 用語解説
eIF3
eIF3(真核生物翻訳開始因子3)とは、真核生物におけるタンパク質の生合成(翻訳)の開始段階において中心的な役割を果たす、巨大かつ複雑な多タンパク質複合体である。1
eIF3は真核生物の翻訳開始因子の中で最も大きく、哺乳類においては13個の異なるサブユニット(eIF3aからeIF3mまで)から構成されている。2
タンパク質合成の翻訳開始期において、eIF3は40Sリボソーム小サブユニットに結合し、他の翻訳開始因子やメッセンジャーRNA(mRNA)のリボソームへのリクルートを助けることで翻訳前開始複合体の形成を促進する。1
具体的には、eIF3はMet-tRNAiを保持したeIF2・GTP複合体やeIF1、eIF1Aなどとともに40Sリボソームサブユニット上に43Spre-initiation complexを形成するために不可欠な土台を提供する。2
また、eIF3はmRNAの5'非翻訳領域に存在する特定の構造を認識・解読し、開始コドン(AUG)を正確にスキャンして見つけ出すプロセスにおいても重要な調節機能を担っている。1
近年の構造生物学的な研究やクライオ電子顕微鏡を用いた解析により、eIF3複合体の立体構造や、リボソーム表面における正確な結合位置が詳細に明らかにされつつある。2
細胞内におけるeIF3の機能異常や、特定のサブユニットの過剰発現・欠損は、細胞周期の制御異常やアポトーシスの回避を引き起こすことが知られている。1
特にがん細胞においては、多くの癌原遺伝子や細胞増殖に関連するmRNAの翻訳選択的に促進するため、eIF3の構成サブユニット(eIF3aやeIF3hなど)ががんの進展や予後不良に関与するバイオマーカーとして注目されている。2
このように、eIF3は基礎的な分子生物学における遺伝子発現メカニズムの理解だけでなく、腫瘍学や創薬研究の分野においても重要な標的分子の一つとして位置づけられている。1