HEALTH WORDS / 用語解説
メタドン
Methadone
メタドンとは、合成オピオイドの一種であり、主として鎮痛薬および麻薬依存症の治療における維持療法(置換療法)に用いられるμ受容体作動薬である。1 2
化学構造的にはフェニL基を持つ合成化合物であり、従来のオピオイド受容体に対するアゴニストとして作用する。3
薬理学的には、中枢神経系に作用して鎮痛効果を示すほか、消化管の運動抑制などの消化器系への影響も認められる。1
臨床医学の領域においては、がん性疼痛などの難治性の疼痛管理において、他のオピオイド製剤による鎮痛効果が不十分である場合や、副作用により継続が困難な場合の代替薬として選択されることがある。3
また、ヘロインなどのオピオイド依存症に対する薬物療法においても重要な役割を担っており、離脱症状の軽減や薬物乱用行動の抑制を目的とした維持療法プログラムの中で投与される。2
体内動態の特徴として、経口投与時の生物学的利用能が比較的高く、肝臓のシトクロムP450(主にCYP3A4やCYP2B6など)によって代謝される。3
血中濃度の半減期には大きな個体差が存在し、一般に長時間を要するため、反復投与によって体内に蓄積しやすい特性を持つ。3
この長い作用時間と持続的な血中濃度の維持は、離脱症状を予防する上で有利である一方で、過量投与による呼吸抑制や中毒症状が長期間にわたって持続する危険性も内包している。2
副作用としては、一般的なオピオイドと同様に、便秘、吐き気、嘔吐、眠気、めまいなどが高頻度で発現するほか、心電図におけるQT間隔の延長や不整脈のリスクが知られている。3
そのため、使用に際しては患者の心血管系の状態や肝機能、併用薬のモニタリングが極めて重要となる。3
薬物相互作用の面では、CYP3A4を阻害あるいは誘導する薬剤との併用により、メタドンの血中濃度が変動し、毒性の増強や効果の減弱を招くことがあるため注意が必要である。3
法規制の観点からは、その強い精神依存性および身体依存性、乱用のおそれから、多くの国や地域で厳格な法律による麻薬としての管理下に置かれている。1
参考文献・出典
- 厚生労働省:麻薬及び向精神薬取締法関係資料: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutu_乱用/index_00004.html ↩1 ↩2 ↩3
- 国立医薬品食品衛生研究所:安全情報: https://www.nihs.go.jp/osh/faq/wn-index.html ↩1 ↩2 ↩3
- 医薬品医療機器総合機構:添付文書情報: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuhinDetail/ResultBasisPDF/400233_8219001F1020_2_F_01 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7