HEALTH WORDS / 用語解説
イオン強度
Ionic strength
ルイス=ランダル(Lewis and Randall)によって1921年に導入された概念であり、溶液中におけるイオンの濃度とその価数の2乗を掛け合わせた値の総和の半分として定義される。1
数学的には、溶液中のすべてのイオン種 $i$ について、そのモル濃度 $c_i$ と価数 $z_i$ の積 $c_i z_i^2$ の総和を計算し、それを2で割った値($I = \frac{1}{2} \sum c_i z_i^2$)として表される。1
この指標は、単純な濃度ではなくイオンの電荷の大きさを強く反映する特徴を持っており、例えば1価のイオン同士の塩よりも、2価や3価の多価イオンが含まれる溶液においてイオン強度は飛躍的に高くなる。2
医学や生物学、生化学の分野において、イオン強度はタンパク質や核酸などの生体高分子の溶解度や構造安定性を議論する上で極めて重要な物理量となっている。3
溶液のイオン強度が変化すると、生体高分子の表面にある電荷と周囲の水和イオンとの相互作用が変動し、分子間の静電相互作用の強さが変化する。3
これに伴い、タンパク質の立体構造が維持されなくなったり、機能が低下したりすることがあるため、生化学実験や生体試料の保存においては適切なイオン強度を維持することが求められる。4
また、生体内における血液や細胞内液などの体液も一定のイオン強度に保たれており、細胞膜を介した物質輸送や神経伝達、酵素反応の速度論などにおいて基礎的な役割を果たしている。5
緩衝液の調製においてもイオン強度の調整は必須であり、電気泳動法やクロマトグラフィーといった分離分析技術において、分子の移動度や吸着挙動を制御するための重要なパラメータとして利用されている。6
参考文献・出典
- 化学辞典 第2版: https://kotobank.jp/word/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%BC%B7%E5%BA%A6-146395 ↩1 ↩2
- 物理化学用語辞典: https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10023472.html ↩
- 生化学辞典 第4版: https://kotobank.jp/word/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%BC%B7%E5%BA%A6-146395 ↩1 ↩2
- 生物物理化学: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophysico/54/0/54_S120/_pdf ↩
- 生理学テキスト: https://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2017/04/post-328.html ↩
- 分析化学用語辞典: https://www.jsac.or.jp/bunseki/i_index.html ↩