HEALTH WORDS / 用語解説
インフォームド・コンセント
Informed Consent
インフォームド・コンセントとは、医療従事者が患者に対して治療や検査などの医療行為の内容について、診断名、病状、治療の目的と内容、利益と副作用・リスク、他の治療法の選択肢、予後などを分かりやすく十分な時間をかけて説明し、患者がその内容を十分に理解した上で、自らの自由意思に基づいて医療行為に同意または拒否するプロセスのことである。1
日本語では一般的に「説明と同意」と訳されることが多いが、単に説明を受けて同意書に署名するという形式的な手続きを指すのではなく、医師と患者の間における十分な情報共有と信頼関係の構築を基礎とした、医療の倫理的および法律上の重要な原則である。2
歴史的背景として、かつては医師が最善と考える治療を患者に施すという父権主義(パターナリズム)が医療の主流であった。2 しかし、患者の自己決定権を尊重する考え方の浸透や、医療事故の防止、医療過誤をめぐる訴訟の増加などを背景として、1970年代以降にアメリカ合衆国を中心に法的・倫理的概念として確立され、世界各国へ普及した。2
現代の臨床現場におけるインフォームド・コンセントの具体的な構成要素としては、以下の項目が挙げられる。 第1に、患者の病状および診断に関する正確な情報の提供である。1 第2に、提案されている検査や治療の具体的な内容、およびそれがもたらす期待される効果である。1 第3に、その医療行為に伴う潜在的なリスク、副作用、および偶発症の可能性である。1 第4に、当該の治療法以外に存在する他の治療法や、何もしない場合の経過に関する情報である。1 第5に、患者が情報を理解し、自分の意思で選択や拒否をする権利が保障されていることである。1
また、インフォームド・コンセントは臨床現場だけでなく、臨床試験や治験、医学研究の分野においても極めて重要な役割を担っている。3 人間を対象とする医学研究や治験を実施する際には、被験者となる個人に対して研究の目的、方法、予想される利益と不利益、プライバシーの保護、研究参加は自由意思によるものであり、いつでも不利益を受けることなく同意を撤回できることなどを事前に文書で説明し、自由な意思による書面での同意を得ることが法的義務とされている。3
近年の医療の高度化や複雑化に伴い、患者が短時間の説明だけで医療行為の本質を理解することは困難な場合も少なくない。そのため、インフォームド・コンセントは単発の同意書取得イベントではなく、患者の価値観や生活の質(QOL)を考慮しつつ、医師や看護師などの医療従事者チームと患者との間で行われる継続的な対話のプロセスとして捉えられるようになっている。2