HEALTH WORDS / 用語解説
エコーウイルス9型
Echovirus 9
エコーウイルス9型とは、ヒトを宿主とするエンテロウイルス属のピコルナウイルス科に分類されるウイルスの一種であり、主として小児における無菌性髄膜炎や発疹を引き起こす病原体である。1
エコーウイルス(ECHOウイルス:Enteric Cytopathogenic Human Orphan virus)の総称に含まれる血清型の一つであり、エンテロウイルスB種に属している。RNAウイルスであり、ゲノムとして一本鎖プラス鎖RNAを有している。エンベロープを持たない正二十面体のカプシド構造を特徴とし、酸に対して比較的安定な性質を示すため、消化管を通過して感染を成立させることが可能である。
本ウイルスによる感染症の伝播経路は、主として糞口感染であるが、飛沫感染や接触感染によっても伝播する。ヒトからヒトへと感染が広がり、特に保育施設や学校などの集団生活環境において流行を引き起こすことがある。感染しても不顕性感染に終わる場合が多いが、有症状の場合には多様な臨床症状を呈する。
代表的な臨床症状としては、発熱、上気道炎症状、悪心、嘔吐などが挙げられる。また、特徴的な皮膚発疹(皮疹)を伴うことが多く、麻疹様あるいは風疹様に似た紅斑性の発疹が顔面や躯幹に出現することがある。このため、かつては発疹を伴う熱性疾患の原因ウイルスとして詳細な研究が行われてきた。
さらに、エコーウイルス9型は中枢神経系へ侵入する能力が高く、小児の無菌性髄膜炎の主要な原因ウイルスの一つとして知られている。髄膜炎を発症した場合には、激しい頭痛、嘔吐、項部硬直などの髄膜刺激症状が認められる。まれではあるが、脳炎や麻痺性疾患を併発することもある。乳児期早期に感染した場合には、全身性の重篤な感染症(敗血症様症状や肝機能障害など)を引き起こすリスクがあることが指摘されている。
診断にあたっては、咽頭拭い液、糞便、髄液などの検体を用いたウイルス分離や、RT-PCR法による遺伝子検出が有用である。血清学的診断として中和抗体価の測定が行われることもある。現在、エコーウイルス9型に特異的な抗ウイルス薬やワクチンは一般に広く臨床使用されていないため、治療は対症療法が中心となる。脱水に対する輸液や、発熱および頭痛に対する解熱鎮痛薬の投与など、患者の症状に応じた支持療法が行われる。予防としては、手洗いや手指消毒の徹底、環境の衛生管理などの標準的な感染対策が重要となる。1 また、国内における感染症発生動向調査の対象疾患として監視体制が敷かれており、厚生労働省や国立感染症研究所等によって動向が注視されている。2