HEALTH WORDS / 用語解説
カタル性虫垂炎
Catarrhal appendicitis
カタル性虫垂炎とは、虫垂の粘膜層および粘膜下層に限局した軽度の炎症が生じている状態であり、急性虫垂炎の初期段階として分類される疾患である。1 虫垂は盲腸の先端に付着する細長い管状の器官であり、ここに何らかの原因で閉塞や炎症が起こることで虫垂炎が発症する。2 急性虫垂炎は病理組織学的な炎症の進展度によっていくつかの段階に分類され、その中でも最も軽症な初期病変がカタル性虫垂炎である。1
カタル性虫垂炎の主な病態生理としては、虫垂の内腔が糞石やリンパ濾胞の過形成などによって閉塞しかけること、あるいは血流障害の初期段階として粘膜に充血や浮腫が生じることが挙げられる。1 この段階では炎症の範囲が虫垂の深層である筋層や漿膜層には及んでおらず、虫垂の構造的な破綻や壊死は生じていないのが特徴である。1 しかし、適切な診断と治療が行われずに炎症が持続・進行した場合には、蜂巣炎性虫垂炎や壊疽性虫垂炎といったより重篤な病態へと進展する可能性がある。1
臨床的な症状としては、初期には明確な限局性の腹痛ではなく、上腹部痛や臍周囲痛といった心窩部痛や腹部不快感を伴うことが多い。2 これは消化管の迷走神経などを介した内臓痛としての性質を持つためであり、時間経過とともに炎症が虫垂の漿膜側や周囲の腹膜へと波及するにつれて、右下腹部へと疼痛が移動するのが典型的な経過である。2 これにともない、食欲不振や軽度の悪心、嘔吐などの消化器症状や、微熱がみられることがある。2
診断においては、患者からの詳細な問診による症状の経過の聴取に加え、右下腹部の圧痛や筋性防御の有無を確認する身体診察が重要となる。2 血液検査では、白血球数の軽度な上昇やC反応性蛋白(CRP)の高値といった炎症反応が確認される場合があるが、カタル性虫垂炎の初期では検査値が正常範囲内にとどまることもある。2 そのため、確定診断には腹部超音波検査や腹部造影CT検査などの画像検査が広く用いられており、検査によって腫大した虫垂や虫垂周囲の脂肪織濃度上昇などを視覚的に評価することが不可欠である。2
治療方針については、かつては急性虫垂炎と診断された場合には原則として外科手術による虫垂切除術が行われてきたが、近年では抗菌薬を用いた保存的治療が選択されることもある。1 特にカタル性虫垂炎のような軽症例においては、抗菌薬の投与によって炎症が速やかに軽快し、治癒が得られる場合も少なくない。1 一方で、保存的治療を行った場合でも再発のリスクが存在することや、症状の進行や鑑別疾患の除外の観点から、患者の全身状態や画像検査の所見を総合的に判断した上で外科的治療が選択されることも多い。1