HEALTH WORDS / 用語解説
ゴモリ・トリクローム変法染色
Modified Gomori Trichrome Stain
ゴモリ・トリクローム変法染色とは、主として骨格筋生検標本の観察において、筋線維の微細構造やミトコンドリア異常、線維化などを詳細に評価するために用いられる特殊染色法である。1
本染色法は、エングル(Engel)らによって改良された方法が広く普及しており、神経筋疾患の病理診断において不可欠な手技の一つとなっている。1
通常のヘマトキシリン・ eosin染色(HE染色)では明瞭に捉えにくい筋原線維の構造変化や、筋線維内の微小な異常構造物を鮮明に染め分けることができる点に大きな特徴がある。2
染色の原理としては、クロモトロープ2R、ファストグリーンFCF、ホスホタングステン酸などを組み合わせた試薬を用いており、酸性染料の親和性の違いを利用して組織の各成分を多色に染め上げる。3
具体的には、筋原線維は緑色から青緑色に、コラーゲン線維は緑色に染まり、細胞核は赤紫色から赤色に染色される。3
また、ミトコンドリアの異常蓄積が見られる場合には、その部位が赤色から濃い赤紫色に染まるため、いわゆる「ラグドレッド線維(RRF:Ragged-red fibers)」を検出する上で極めて有用な検査法となっている。2
ミトコンドリア脳筋症などのミトコンドリア病においては、このラグドレッド線維の存在が診断上の重要な手掛かりとなるため、本染色法が診断基準の項目に含まれることも多い。2
さらに、ネマリンミオパチーにおけるネマリン体や、核内棒状体、ライソゾーム蓄積による空胞など、様々な先天性ミオパチー特有の構造物を赤色や赤紫色の塊として浮き彫りにすることができる。1
筋生検標本の作製においては、凍結切片を用いて迅速かつ正確に染色が行われ、病理医や臨床検査技師によって顕微鏡下で筋線維の形態学的な詳細が解析される。3
このように、ゴモリ・トリクローム変法染色は、神経内科領域や病理学の分野において、原因不明の筋力低下や筋萎縮を示す患者の鑑別診断を進める上で極めて高い臨床的意義を持つ検査手法である。1