HEALTH WORDS / 用語解説
サーファクタント
Surfactant
サーファクタントとは、液体表面の表面張力を著しく低下させる物質の総称であり、界面活性剤とも呼ばれる生理活性物質である。1
生物学および医学の分野においてサーファクタントといえば、主に肺の肺胞表面を覆う肺サーファクタント(肺胞サーファクタント)を指すことが多い。1
肺サーファクタントは、肺胞の内面に薄い液層を形成し、吸気時における肺胞の過剰な膨張を防ぐとともに、呼気時の肺胞の虚脱を防ぐ極めて重要な役割を担っている。1
この物質が存在することにより、肺を広げるために必要な圧迫力や呼吸仕事量が大幅に軽減されることになり、効率的なガス交換が可能となる。1
肺サーファクタントの大部分は脂質とタンパク質によって構成されており、その中でもリン脂質の一種であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)が主要な成分として含まれている。1
脂質成分のほかには、特異的なアポタンパク質であるサーファクタントタンパク質(SP-A、SP-B、SP-C、SP-Dなど)が重要な機能を果たしており、表面活性の維持だけでなく、生体防御機構や免疫応答にも深く関与している。1
これらの成分は、肺のI型肺胞上皮細胞およびII型肺胞上皮細胞のうち、主にII型肺胞上皮細胞によって合成および分泌が行われる。1
合成された肺サーファクタントは、細胞質内のラメラ小体と呼ばれる特殊な顆粒状の構造体に貯蔵されたのち、エキソサイトーシスによって肺胞腔内へ分泌される。1
分泌された肺サーファクタントは、肺胞表面において単分子膜を形成し、水の表面張力をほぼゼロに近いレベルまで低下させる特性を示している。1
ヒトの胎児発育過程において、肺サーファクタントの分泌量が十分に達していない状態のまま出生すると、肺が自力で膨らみを維持できずに重篤な呼吸障害を引き起こすことがある。2
この病態は新生児呼吸窮迫症候群(NRDS)と呼ばれ、未熟児医療における大きな課題の一つとなっている。2
新生児呼吸窮迫症候群の治療や予防を目的として、動物の肺から抽出された成分や人工合成された物質を投与するサーファクタント補充療法が臨床の現場で広く行われている。2
また、肺サーファクタントの代謝異常や機能低下は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)をはじめとする様々な呼吸器疾患の病態形成にも深く関与していることが知られている。2