HEALTH WORDS / 用語解説
ドパミン受容体
Dopamine receptor
ドパミン受容体とは、神経伝達物質であるドパミンをリガンドとするG蛋白質共役受容体のファミリーであり、中枢神経系および末梢神経系において多様な生理的機能を調節する膜受容体である。1
ドパミン受容体は、そのアミノ酸配列の相同性や情報伝達系(シグナル伝達)におけるアデニル酸シクラーゼに対する作用機序の違いから、大きくD1様受容体ファミリーとD2様受容体ファミリーの2つに大別される。2
D1様受容体ファミリーにはD1受容体およびD5受容体が含まれており、これらは主にGs蛋白あるいはGolf蛋白と共役してアデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を上昇させる働きを持つ。3
一方、D2様受容体ファミリーにはD2受容体、D3受容体、およびD4受容体が含まれ、これらはGi蛋白あるいはGo蛋白と共役してアデニル酸シクラーゼを抑制し、サイクリックAMP(cAMP)の産生を低下させる。4
D2様受容体ファミリーに属する受容体は、アデニル酸シクラーゼの抑制に加えて、電位依存性カルシウムチャネルの阻害や内向き整流カリウムチャネルの活性化を介して、神経細胞の興奮性を低下させる調節を行う。5
中枢神経系におけるドパミン受容体の分布は領域によって異なり、例えばD1受容体やD2受容体は線条体に高密度に発現しており、大脳基底神経系における運動調節回路の形成に不可欠な役割を果たしている。6
また、前頭葉などの大脳皮質や辺縁系にもドパミン受容体は広く分布しており、報酬系、感情の制御、認知機能、記憶、および注意といった高次脳機能の調節に関与している。7
末梢組織においてもドパミン受容体は存在し、腎臓におけるナトリウム排泄の調節、血管の拡張による血圧の制御、および消化管の運動性の調整など、循環器系や消化器系の機能維持に貢献している。8
医学的な観点から、ドパミン受容体は多くの精神疾患や神経疾患の病態および薬物療法の主要な標的として極めて重要視されている。9
例えば、脳内のドパミン神経系における機能異常やD2受容体の過剰受容体占有率は、統合失調症の陽性症状の発現に関与していると考えられており、抗精神病薬の多くはD2受容体に対する拮抗薬(ブロッカー)として作用する。10
さらに、パーキンソン病では黒質のドパミン作動性ニューロンの変性・脱落に伴い、下流のドパミン受容体へのドパミン供給が著しく減少するため、症状の改善を目的としてドパミン受容体作動薬が臨床的に広く用いられている。11
参考文献・出典
- Pharmacological Reviews: https://pharmrev.aspetjournals.org/content/73/1/2-146 ↩
- Physiological Reviews: https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/physrev.00030.2009 ↩
- Neuropsychopharmacology: https://www.nature.com/articles/npp2015243 ↩
- Molecular Pharmacology: https://molpharm.aspetjournals.org/content/85/1/2 ↩
- Journal of Neurochemistry: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jnc.14488 ↩
- Brain Research Reviews: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/016501739290003F ↩
- Biological Psychiatry: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S000632231632822X ↩
- Clinical and Experimental Hypertension: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/10641963.2012.671510 ↩
- Current Opinion in Pharmacology: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S147148921630073X ↩
- The American Journal of Psychiatry: https://ajp.psychiatryonline.org/doi/full/10.1176/appi.ajp.2015.15010041 ↩
- The Lancet Neurology: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S147444221930405X ↩