HEALTH WORDS / 用語解説
パラミクソウイルス科
Paramyxoviridae
パラミクソウイルス科とは、負鎖センス一本鎖RNAをゲノムとして持つ、エンベロープを有するウイルスの分類群の一つである。1 ヒトや動物に感染して多様な呼吸器感染症や発疹性疾患を引き起こす重要な病原体を多数含んでいる。2
パラミクソウイルス科に属するウイルスの粒子(ビリオン)は多形性を示すが、一般には球状であり、宿主細胞の細胞膜由来の脂質二重膜であるエンベロープに包まれている。1 エンベロープの表面には、宿主細胞への吸着や侵入に関与する糖蛋白のスパイク状突起が多数存在している。2 代表的な表面抗原としては、赤血球凝集活性とノイラミニダーゼ活性を持つHN蛋白、凝集活性のみを持つH蛋白、あるいは細胞融合を引き起こすF(フュージョン)蛋白が挙げられる。1
ゲノムである一本鎖RNAは、ヌクレオカプシド(核カプシド)と呼ばれる構造の中でヌクレオプロテイン(N蛋白)と密に結合しており、これがらせん状の骨格を形成している。1 このヌクレオカプシド複合体には、ウイルス自身がコードするRNA依存性RNAポリメラーゼ(L蛋白)やリン蛋白(P蛋白)が結合しており、感染後の転写および複製のプロセスにおいて必須の役割を果たす。2
遺伝子の構造と複製のメカニズムにおいては、宿主細胞の細胞質内で増殖を行う点が大きな特徴である。1 ウイルスのF蛋白の働きによって、ウイルスのエンベロープと宿主の細胞膜が直接融合し、ゲノムと酵素群が細胞質内へと放出される。2 細胞質内においてRNA依存性RNAポリメラーゼが負鎖RNAからmRNAを転写し、さらにゲノムRNAの複製を行う。1 多くの種では、感染した細胞同士が融合して多核巨細胞(シンシチウム)を形成する特徴的な細胞変性効果が観察される。2
近年の分類学的な再編成により、従来の広義のパラミクソウイルス科はいくつかの科へと分割され、現在はモルビリウイルス属、レスピロウイルス属、ルブラウイルス属などの属を含むパラミクソウイルス科 (Paramyxoviridae)として整理されている。1 医学的に重要なヒトの病原体としては、麻疹ウイルス(モルビリウイルス属)、ムンプスウイルス(おたふく風邪の原因ウイルス)、パラインフルエンザウイルスなどが含まれる。2 これらは飛沫感染を主たる感染経路としてヒトからヒトへと伝播し、気道上皮細胞などで増殖したのちに全身感染を引き起こすことがある。2