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HEALTH WORDS / 用語解説

フュージョン

Fusion

フュージョンとは、生物学、医学、遺伝学などの分野において、2つ以上の異なる実体(細胞、遺伝子、タンパク質、組織など)が結合または融合する現象や技術を指す総称である。1

生物学および医学の領域において、細胞融合(Cell fusion)は代表的なフュージョンの形態の一つである。細胞融合とは、複数の異なる細胞が細胞膜レベルで一体化し、単一の細胞(ヘテロカリオンや融合細胞)を形成する生物学的プロセスをいう。2

自然界における細胞融合の生理学的な例としては、受精における精子と卵子の合体や、骨格筋の発達における筋芽細胞の融合などが挙げられる。これらは多細胞生物の発生や組織形成において不可欠なメカニズムである。3

実験医学や分子生物学の分野では、人工的に細胞融合を誘導する技術が広く応用されている。その最も著名な例がハイブリドーマ技術であり、抗体産生B細胞と骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)を融合させることで、特定の抗原に対するモノクローナル抗体を半永久的に産生する細胞株を作り出すことができる。この技術は免疫学の研究だけでなく、臨床検査や抗体医薬品の開発において極めて重要な基盤となっている。4

また、遺伝子レベルにおけるフュージョンとしては、遺伝子融合(Gene fusion)がある。これは、本来は別々に存在する2つ以上の遺伝子が、染色体異常(転座、欠失など)や組換えによって結合し、一つの新しいキメラ遺伝子を形成する現象である。5

遺伝子融合によって生じた融合遺伝子は、しばしば異常な融合タンパク質(Fusion protein)を翻訳する。医学領域において、特定の融合タンパク質の産生は、白血病や肉腫などの様々な悪性腫瘍(がん)の発症や進展に深く関与していることが知られている。例えば、慢性骨髄性白血病におけるBCR-ABL融合遺伝子はその代表例であり、異常なチロシンキナーゼ活性を示して細胞の無秩序な増殖を引き起こす。6

このような医学的知見に基づき、融合遺伝子やそれがコードする融合タンパク質は、腫瘍組織の分子診断における重要なバイオマーカーとして利用されている。さらに、これらを標的とした分子標的薬の開発が進められており、個別化医療(プレシジョン・メディシン)の推進においてフュージョン関連の解析は欠かせない要素となっている。7

加えて、タンパク質工学の分野では、異なる機能を持つ2つのタンパク質をコードする遺伝子を人工的に連結し、一つの融合タンパク質として発現させる技術が応用されている。これにより、医薬品の血中半減期を延長させたり、特定の受容体に対する親和性を高めたりすることが可能となり、創薬研究の領域でもフュージョン技術は多大な貢献をしている。8

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906051515254133 ↩
  2. 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004353840-00 ↩
  3. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906020448101452 ↩
  4. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002011124119853 ↩
  5. 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008010836-00 ↩
  6. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907038165507116 ↩
  7. 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028952402-00 ↩
  8. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201102044810764121 ↩