HEALTH WORDS / 用語解説
プロリル水酸化酵素
Prolyl hydroxylase
プロリル水酸化酵素とは、タンパク質中のプロリン残基の水酸化を触媒する酵素の総称である。1
プロリル水酸化酵素は、分子内に鉄イオン(二価鉄イオン)を保持しており、酵素反応の進行においてアスコルビン酸(ビタミンC)や2-オキソグルタル酸、酸素分子を補因子あるいは基質として利用する特徴を持つ。1
生物学的に最もよく知られている代表例として、低酸素誘導因子(HIF)のプロリル残基を水酸化するプロリル水酸化酵素(PHD、またはHIF-プロリル水酸化酵素)が挙げられる。2
このHIFに対するプロリル水酸化酵素は、細胞内の酸素濃度を感知するセンサーとしての役割を担っており、正常な酸素環境下ではHIFの特定のプロリン残基を特異的に水酸化する。2
水酸化されたHIFは、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)タンパク質を含むユビキチンリガーゼ複合体によって認識され、プロテアソームを介して速やかに分解される仕組みになっている。2
一方で、低酸素状態や虚血の状態においてはプロリル水酸化酵素の活性が低下するため、HIFは分解を免れて細胞質から核内へと移行し、エリスロポエチンなどの遺伝子発現を誘導して生体の低酸素応答調節に関与する。2
また、もう一つの重要なグループとして、コラーゲンの生合成に必須であるコラーゲン・プロリル水酸化酵素が存在する。1
コラーゲン分子は特有の三重らせん構造を形成しているが、この構造が熱力学的に安定に保たれるためには、構成成分であるプロリン残基があらかじめ水酸化されてヒドロキシプロリンに変換されている必要がある。1
コラーゲン・プロリル水酸化酵素が正常に機能しない場合、安定したコラーゲン線維が形成されなくなるため、結合組織の脆弱化を引き起こす原因となる。1
このように、プロリル水酸化酵素は低酸素応答やタンパク質の構造安定化といった生命維持に欠かせない多様な生体現象を分子レベルで制御している。2