ホームランゲルハンス細胞組織球症

HEALTH WORDS / 用語解説

ランゲルハンス細胞組織球症

ランゲルハンス細胞組織球症とは、ランゲルハンス細胞に類似した単核細胞が、皮膚、骨、肺、肝臓、脾臓、リンパ節などの様々な臓器や組織に増殖・浸潤する、原因不明の疾患である。1 かつては病態に応じて組織球症X、エオシン性肉芽腫症、ハンド・シュラー・クリスチャン病、レター・シワ病などと個別の疾患名で呼ばれていたが、現在ではこれらは同一の疾患スペクトラムに含まれるものとして、ランゲルハンス細胞組織球症という統一名称で扱われている。1

本症は小児から成人まで幅広い年齢層で発症するが、特に1歳から幼児期にかけての小児に比較的多く見られる疾患である。2 発症率は人口10万人あたり年間約数人程度と推定されており、厚生労働省により指定難病に定められている難病の一つである。1 病因や正確な発症メカニズムについては長らく不明であったが、近年の分子生物学的研究により、細胞増殖に関与する遺伝子、特にBRAF遺伝子などの遺伝子変異が多くの患者で検出されることが判明し、腫瘍的な性質を持つ病態として捉えられるようになっている。1

臨床症状は、病変が単一の臓器にとどまる「単一臓器型」と、複数の臓器に病変が広がる「多臓器型」によって大きく異なる。2 単一臓器型では骨病変が最も多く見られ、頭蓋骨や長管骨などに痛みを伴う腫瘤や骨融解が引き起こされる。1 また、皮膚に湿疹や紅斑、潰瘍といった皮疹が現れることも少なくない。2

一方、多臓器型では、肝臓、脾臓、造血器などの肝脾腫や貧血、血小板減少症といった全身症状が現れやすい。1 特に乳幼児期に発症した重症例では、肝機能障害や呼吸器症状などを伴うことがあり、造血幹細胞などの機能低下に注意が必要となる。2 さらに、下垂体に病変が及ぶことで、尿崩症を引き起こし、多尿や口渇といった症状が長期間にわたって持続する場合がある。1

診断においては、対象となる組織を生検し、採取した検体を用いた病理組織学検査が必須となる。1 顕微鏡を用いた観察により、病変部におけるランゲルハンス細胞の増殖を確認し、免疫組織化学染色法によってCD1抗原やランゲリン(CD207)といった特異的なマーカーが陽性であることを証明することが診断基準の根拠とされる。1 加えて、病変の広がりや全身への浸潤度合いを評価するために、レントゲン検査、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像診断や血液検査が総合的に実施される。2

治療方針は、病変の範囲、リスク臓器の有無、年齢などに基づいて個別に決定される。1 病変が限局している単一臓器型の骨病変などでは、経過観察や外科的切除、あるいは局所的なステロイド薬の注射などで自然に寛解することもある。2 しかし、多臓器型やリスク臓器(造血器、肝臓、脾臓など)に病変が及ぶ重症例では、化学療法(抗悪性腫瘍薬の投与)が選択されるのが一般的である。1 代表的な薬剤としてはビンクリスチンやプレドニゾロンなどが用いられ、必要に応じて代謝拮抗薬なども併用される。2 近年では、特定の遺伝子変異を標的とした分子標的薬を用いた治療法の臨床試験や治験も進められており、難治性症例に対する新たな治療選択肢として期待が寄せられている。1

参考文献・出典

  1. 難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4493 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12
  2. 小児慢性特定疾病情報センター: https://www.shouman.jp/disease/details/08_02_028/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7