HEALTH WORDS / 用語解説
医原性損傷
Iatrogenic injury
医原性損傷とは、医師などの医療従事者による診断、治療、手術などの医療行為や介入の過程において、意図せず患者に生じた身体的な障害や合併症のことである。1
広義には、薬物の副作用や手術時の偶発的な組織の損傷、医療器具の不具合や感染症の伝播など、医療介入が直接的または間接的な原因となって発生したあらゆる有害事象が含まれる。2
医療の高度化および複雑化に伴い、様々な診断技術や治療法が導入されている一方で、それらに伴うリスクも増加しているため、医原性損傷の予防と管理は医療安全の領域において極めて重要な課題となっている。
発生機序としては、外科手術における不可避的な血管や神経の損傷のほか、薬剤の不適切な投与量や相互作用による副作用、無菌操作の不徹底による院内感染、さらには医療従事者間のコミュニケーション不足や確認不足に起因するヒューマンエラーなど多岐にわたる。3
臨床現場においては、疾患自体の病態による症状と医原性損傷による症状の鑑別が困難である場合があり、正確な診断と迅速な対応が求められる。
多くの医原性損傷は予防可能なものであると考えられており、各医療機関ではインシデントやアクシデントの報告制度の整備、チェックリストの活用、チーム医療の推進、医療従事者を対象とした研修の実施などを通じて、その発生防止とリスクマネジメントの徹底が図られている。4
万が一医原性損傷が発生した場合には、速やかな治療や処置を行って患者の身体的負担を最小限に抑えるとともに、患者や家族に対する誠実な説明と情報共有を行うことが不可欠である。