ホーム上位肋骨

HEALTH WORDS / 用語解説

上位肋骨

Superior ribs

上位肋骨とは、ヒトの胸郭を構成する肋骨のうち、頭側(上部)に位置する第1肋骨から第7肋骨までの骨を指す総称である。解剖学的には、これらの肋骨は胸骨へと直接関節を介して連結しているため真肋とも分類され、下位肋骨や浮遊肋骨とは構造上の特徴や臨床医学的意義が異なる。1 上位肋骨に含まれる各肋骨は、胸椎の椎骨から胸骨にかけて弓状の骨構造を形成し、呼吸運動に伴う胸郭の容積変化において重要な役割を果たす。特に最上部に位置する第1肋骨は、鎖骨や斜角筋、腕神経叢、鎖骨下動脈といった重要な血管および神経と密接に隣接しているため、解剖学的にも臨床医学的にも極めて高い重要性を持っている。2

胸郭の運動において、上位肋骨の動きは下位肋骨とは異なる特異な動態を示す。吸気時において、上位肋骨および胸骨は前方および上方へと持ち上がる運動を行い、これにより胸郭の前後径を拡大させる。この動きは、ポンプハンドル運動とも称され、効率的な肺の換気を補助する機能的な骨格動態の一部をなしている。3

臨床医学および整形外科学、胸部外科学の領域において、上位肋骨はさまざまな病態や症候群の発生源、あるいは手術時の解剖学的指標として着目される。代表的な疾患として挙げられるのが胸郭出口症候群であり、これは第1肋骨や頸肋、あるいは肥厚した斜角筋によって腕神経叢や鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が圧迫されることで、上肢の痺れ、疼痛、脱力感、血流障害などを引き起こす複合体である。4

また、上位肋骨はその位置的特徴から、外傷学においても特筆すべき存在である。交通事故や高所からの転落などによって強い外力が胸部に加わった際、上位肋骨は強固な筋肉や鎖骨、肩甲骨などに保護されているため比較的骨折しにくいとされている。しかし、上位肋骨が骨折するほどの高エネルギー外傷が発生した場合には、大動脈損傷や気胸、肺挫傷、鎖骨下動脈損傷といった、生命を脅かす重篤な合併症を伴う危険性が極めて高いことが知られている。5

さらに、悪性腫瘍の転移や原発性骨腫瘍の好発部位としても上位肋骨は注意深く観察される対象となる。胸部レントゲン検査やCT、MRIなどの画像診断において、上位肋骨の骨破壊や骨硬化像、異常陰影が発見されることがあり、これらは全身性疾患や局所病変の早期発見の手がかりとなる。胸腔鏡下手術や開胸手術を行う際にも、上位肋骨の解剖学的位置や血管・神経との走行関係を正確に把握することは、医原性損傷を回避し安全な手術操作を行う上で不可欠な要素である。6

参考文献・出典

  1. 解剖学講義: https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r4/anatomy.html ↩
  2. 標準解剖学: https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1423901582 ↩
  3. 生体力学と運動器: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/52/5/52_5_509/_pdf/-char/ja ↩
  4. 頸腕障害と胸郭出口症候群: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1963/27/5/27_5_297/_pdf/-char/ja ↩
  5. 外傷初期診療ガイドライン: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji/19/2/19_107/_pdf/-char/ja ↩
  6. 臨床画像診断学: https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1407204512 ↩