HEALTH WORDS / 用語解説
多包条虫
Echinococcus multilocularis
多包条虫とは、キタキツネなどのイヌ科動物を終宿主とし、小型哺乳類を中間宿主とする寄生虫の一種である人間や動物に包虫症(エキノコックス症)を引き起こす条虫類である1。
成虫は終宿主であるキタキツネやイヌなどの小腸に寄生し、体長数ミリメートル程度の大きさで虫卵を排泄する2。
中間宿主となるのは野ネズミなどの小型哺乳類であり、終宿主が排泄した虫卵を経口感染することで体内に幼虫(包虫)が発育する3。
人間は、多包条虫の虫卵に汚染された山菜や水などを経口摂取することによって偶発的に感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)の原因となる1。
人間に感染した場合、虫卵は腸管から門脈血流に乗って主に肝臓へと運ばれ、そこで幼虫が多房性の嚢胞を形成して腫瘍様の増殖を続ける肝包虫症を引き起こす2。
肝臓内で幼虫が増殖すると、肝機能障害や黄疸、腹水などの症状が現れ、治療を行わずに放置した場合には重篤な経過をたどることがある疾患である3。
日本国内においては、北海道を中心にキタキツネと野ネズミの間で自然界での生活環が維持されており、流行地での生水の飲用や手洗いの不徹底などが感染経路として注意されている1。
診断には、画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査など)による肝臓内の嚢胞性病変の確認や、血清学的検査による抗体の検出が用いられる2。
治療としては、外科的切除が最も根治的な方法とされるが、切除が困難な場合には薬物療法としてアルベンダゾールなどの抗寄生虫薬を用いた長期的な投与が行われる1。
予防の観点からは、流行地において野山の生水をそのまま飲まないこと、山菜や野菜を十分に洗浄および加熱してから摂取すること、キツネなどの野生動物との接触を避け触れた後には必ず手洗いを行うことが重要である3。