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HEALTH WORDS / 用語解説

形成不全

Hypoplasia / Aplasia

形成不全とは、生物の発生または成長の過程において、組織や器官の細胞数が不十分であること、あるいは細胞の増殖が不完全であることにより、その構造や臓器が本来の大きさや完全な機能を持たない状態までしか発達しない異常を指す医学・生物学用語である。1 英語のhypoplasiaは、ギリシャ語の「hypo(下回る、少ない)」と「plasis(形成、成長)」に由来しており、完全な欠損を示す無形成(aplasia)や無発育(agenesis)とは区別される概念であるが、臨床や学術の場においては、これらが広義の発達障害や形態異常の文脈で混同されて用いられることもある。1

この病態は、胚発生の初期段階における遺伝的要因、環境因子、あるいは虚血などの局所的な血流障害によって引き起こされることが多い。2 人体のさまざまな部位に生じる可能性があり、例えばエナメル質形成不全のように歯の組織が十分に作られないことでう蝕のリスクが高まるケースや、小脳形成不全のように脳の一部が発育不全を起こして運動失調などの神経症状を呈するケースが知られている。3

また、造血器における骨髄形成不全(再生不良性貧血など)のように、幹細胞の増殖・分化能力の低下によって血液細胞の産生が著しく減少し、貧血や免疫不全をもたらす全身性の重大な疾患につながる場合もある。4 組織学的な観察においては、実質を構成する細胞の容積や数が明らかに減少していることが確認され、しばしば萎縮との鑑別が必要となるが、萎縮が一度正常に形成された組織が後天的に縮小する現象であるのに対し、形成不全は発達段階における量的不足であるという点において本質的に異なる。5

発生学的な異常としての形成不全は、単一遺伝子疾患や染色体異常といった遺伝的背景を持つ場合もあるほか、母体への薬剤投与、ウイルス感染、放射線曝露などの催奇形因子によっても誘発されることが実験的および臨床的に明らかにされている。6 このような器官の発達不全は、単に形態的な奇形にとどまらず、生命維持に不可欠な生理的機能の不全を伴うことが多く、小児科学、産科学、病理学などの多岐にわたる臨床医学の領域において非常に重要な研究対象および診断・治療の標的となっている。7

参考文献・出典

  1. 南山堂 医学大辞典 ↩1 ↩2
  2. MSDマニュアル プロフェッショナル版: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル ↩
  3. 難度情報センター(INCD) 希少疾患データベース: https://www.nanbyou.or.jp/ ↩
  4. 国立国際医療研究センター 病院: https://www.ncgm.go.jp/ ↩
  5. 病理学コア画像集: https://www.jsps.or.jp/ ↩
  6. 厚生労働省 科学研究費補助金事業 難治性疾患等政策研究事業: https://www.mhlw.go.jp/ ↩
  7. 日本小児科学会: https://www.jpeds.or.jp/ ↩