HEALTH WORDS / 用語解説
感作性
Sensitization
感作性とは、生体が特定の抗原や化学物質などのアレルゲンに繰り返し曝露されることで、その物質に対する免疫応答が過敏に形成される性質のことである。1
感作性が成立する機序としては、主に獲得免疫系が深く関与している。 初めてある化学物質やタンパク質が体内に侵入した際、生体はそれを異物として認識するが、この段階では臨床的なアレルギー症状はほとんど現れない。 しかし、この初回の曝露(感作期)を経て免疫細胞が当該物質を記憶すると、再び同じ物質が体内に侵入した際に、T細胞やB細胞などの免疫応答が劇的かつ迅速に活性化されるようになる。2
感作が成立した後に再び当該物質に曝露されると、炎症反応や組織損傷などの具体的なアレルギー症状が引き起こされる。 この段階を誘発期または挑発期と呼び、皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などの様々な臨床的疾患として現れることとなる。1
医学および毒性学の領域において、感作性は主に皮膚感作性と呼吸器感作性の二つに大別されて評価される。 皮膚感作性は、化学物質などが皮膚から侵入して接触皮膚炎を引き起こす性質を指し、工業用化学物質や化粧品成分などの安全性評価において極めて重要な項目となっている。3
一方、呼吸器感作性は、吸入によって気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの呼吸器症状を引き起こす性質を指す。 呼吸器感作性を持つ物質には、特定の酵素、イソシアネート類、酸無水物などが含まれており、職業性喘息の原因として問題視されることが多い。4
化学物質の安全性管理やGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の国際的な枠組みにおいても、感作性は健康有害性の一つとして厳格に分類されている。 GHS分類では、皮膚感作性物質および呼吸器感作性物質に分けて評価が行われ、それぞれ動物実験やヒトにおける疫学調査、in vitro試験などの信頼性の高いデータに基づいて危険性が判定される。3
感作性の評価手法は、従来の動物実験から代替法へと移行しつつある。 皮膚感作性の試験においては、モルモットを用いたマキシムテスト法やLLNA法(局所リンパ節試験)などの動物実験が長年標準とされてきたが、近年では動物福祉の観点および国際的な動物実験代替法の推進に伴い、細胞株や化学的反応性を指標とした非動物試験の導入が進められている。5
一度獲得された感作性は、長期にわたって持続することが多く、極めて低濃度の曝露であっても再び激しい免疫反応を誘発する特徴を持つ。 そのため、職場や日常生活における化学物質の取り扱いにおいては、感作性を有する物質との接触を物理的に遮断することが、アレルギー疾患の発症および重症化を防ぐための最も効果的な対策とされている。2
参考文献・出典
- 職場のあんぜんサイト:アレルギー・感作性: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo27_1.html ↩1 ↩2
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト 化学物質の感作性: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo27_1.html ↩1 ↩2
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) GHS分類マニュアル: https://www.nite.go.jp/chem/ghs/ghs_manual.html ↩1 ↩2
- 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所: https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/osh_report/rt-49.pdf ↩
- 経済産業省 化学物質安全:動物実験代替法について: https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/other/doubutujikken.html ↩