ホーム抑制性

HEALTH WORDS / 用語解説

抑制性

Inhibitory

抑制性とは、主に神経科学や生理学の分野において、細胞の活動、生体の反応、あるいは代謝などの生体機能を低下させたり、停止させたり、あるいはその亢進を妨げたりする性質や作用のことを指す。1

神経系における抑制性の代表的な例としては、シナプス伝達における抑制性シナプス後電位(IPSP)が挙げられる。 中枢神経系において、グルタミン酸などを主とする興奮性の神経伝達物質が細胞を活性化させるのに対し、抑制性の神経伝達物質であるGABA(ガンマ-アミノ酪酸)やグリシンなどは、それぞれの受容体に結合することで神経細胞の膜電位を過分極させ、新たな活動電位の発生や神経インパルスの伝播を阻止する。1

この抑制性のシナプス伝達は、大脳皮質や小脳をはじめとする脳の各領域において、神経回路の過剰な興奮を防ぎ、神経活動のバランスを保つために極めて重要な役割を果たしている。 例えば、てんかんなどの疾患では、こうした抑制性の神経伝達機構の破綻や機能低下が発作の原因の一つとして深く関与していることが知られている。2

また、薬理学や医学の領域においても「抑制性」という用語は多用される。 中枢神経系の機能を鎮静化させる薬剤の多くは、脳内の抑制性システムを作動薬(アゴニスト)として増強させる働きを持っており、麻酔薬、抗不安薬、睡眠薬などの作用機序において中核的な概念となっている。1

このように、抑制性という生物学的高次機能は、単なる機能の低下を意味するものではなく、生体の恒常性(ホメオスタシス)を維持し、神経回路網の秩序ある情報処理を成立させるための不可欠な制御機構として位置づけられている。2

参考文献・出典

  1. 脳科学辞典: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E6%8A%91%E5%88%B6 ↩1 ↩2 ↩3
  2. GPI広報誌: https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r3/hibou.html ↩1 ↩2