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HEALTH WORDS / 用語解説

核磁気共鳴

核磁気共鳴(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)とは、強い磁場の中に置かれた原子核が、特定の周波数の電磁波(高周波)のエネルギーを吸収し、再び放出する物理現象である。1 物質に固有の磁気的性質を持つ原子核が外部から磁場を受けると、そのエネルギー準位が分裂する。2 そこに適切な周波数の電磁波を照射することで、共鳴現象が引き起こされ、エネルギーの授受が生じる。1

この現象を利用した分析手法である核磁気共鳴分光法(NMR分光法)は、分子構造や化学結合の状態、分子運動を原子レベルで解析するための極めて強力な分析化学的手法として広く用いられている。2 物質を構成する原子核の周囲には電子が存在するため、原子核が感じる実効的な磁場の強さは、その原子核が置かれた化学的環境によってわずかに変化する。 これを化学シフトと呼び、このわずかな周波数の違いを精密に測定することによって、分子内の原子の配置や立体構造を詳細に特定することが可能となる。2

医学および医療の分野において、核磁気共鳴の原理は磁気共鳴画像法(MRI)の基礎となっている。3 MRI装置は、生体組織内に豊富に含まれる水素原子核(プロトン)からの核磁気共鳴信号を三次元的に検出し、生体内の断層画像や血管の画像などを非侵襲的に構築する。3 X線や放射線を使用しないため、放射線被曝を伴わずに体内の脳、脊髄、内臓、筋肉などの微細な構造異常や疾患を明瞭に描き出すことができる。3

このように、核磁気共鳴は基礎物理学における重要な物理現象であるだけでなく、化学における分子構造の決定や、臨床医学における画像診断に不可欠な基盤技術として、現代の科学技術およびヘルスケア全般に多大な貢献をしている。1 生物学や薬学の領域においても、タンパク質や核酸といった生体高分子の溶液状態における立体構造解析や、代謝物質の動態を調べるメタボロミクス研究など、多岐にわたる研究開発の現場で活用されている。2

参考文献・出典

  1. 文部科学省 学術用語集 物理学編: https://jglobal.jst.go.jp/en/detail?JGLOBAL_ID=200906059639504780 ↩1 ↩2 ↩3
  2. 独立行政法人 科学技術振興機構 J-GLOBAL: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907086884395079 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  3. 国立国会図書館 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008064560-00 ↩1 ↩2 ↩3