HEALTH WORDS / 用語解説
梨状陥凹がん
Pyriform sinus cancer
梨状陥凹がんとは、喉頭の脇に位置する下咽頭の梨状陥凹と呼ばれる解剖学的部位に発生する悪性腫瘍(がん)の一種である。1 下咽頭がんの中で最も発生頻度が高いとされており、頭頸部領域の悪性腫瘍の中でも臨床的に重要な位置を占めている。2
発生する主な組織型としては扁平上皮がんが大部分を占めており、これは咽頭や喉頭の粘膜を覆う上皮組織に由来している。3 解剖学的に梨状陥凹の周囲にはリンパ管が非常に豊富に存在しているため、がん細胞が周囲のリンパ節へ転移しやすいという特徴を持っている。4 そのため、初診時においてすでに頸部リンパ節転移を来しているケースが少なくない。2
主な危険因子としては、飲酒および喫煙の強い習慣が挙げられており、これらが複合的に作用することで発がんリスクが大幅に高まるとされている。3 初期症状としては、咽頭の違和感や異物感、軽度の疼痛などが現れることがあるが、自覚症状が乏しいため発見が遅れやすい。2 病状が進行するにつれて、嚥下痛(ものを飲み込む際の痛み)、耳痛(耳への放散痛)、声の変化(嗄声)、血痰、さらには呼吸困難や頸部の腫瘤形成などが生じるようになる。3
診断にあたっては、内視鏡検査(ファイバー検査)を用いて直接病変を観察し、組織診(生検)を行って悪性腫瘍であることの確定診断がなされる。2 また、病期(ステージ)を正確に把握し、遠隔転移や浸潤範囲を評価するために、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像診断が総合的に実施される。3
治療法は、がんの進行度(病期)や患者の全身状態、喉頭の機能温存の可能性などを考慮して多角的に決定される。4 早期がんの場合には、放射線治療や内視鏡手術による機能温存を主眼とした治療が選択肢となることがある。2 一方で、進行した進行がんに対しては、手術療法(下咽頭全摘出術や喉頭合併切除術など)と放射線治療、薬物療法(化学療法)を組み合わせた集学的治療が標準的に行われる。3 治療後には、発声機能や嚥下機能が損なわれることが多いため、言語聴覚療法などのリハビリテーションやサポートケアが極めて重要となる。4
参考文献・出典
- 厚生労働省 院内がん登録 全国集計: https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_rep.html ↩
- 国立がん研究センター 希少がんセンター: https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/hypopharyngeal_cancer/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp/public/cancer/hypopharynx/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 日本頭頸部外科学会: https://www.jshns.or.jp/general/diseases/03/ ↩1 ↩2 ↩3