HEALTH WORDS / 用語解説
胚盤葉上層
Epiblast
胚盤葉上層とは、動物の初期発生において内細胞塊や胚盤葉から分化し、将来的に外胚葉、中胚原基、内胚葉の三胚葉すべてを形成する上皮状の細胞層である。1
哺乳類の発生初期において、受精卵は卵割を経て胚盤胞へと発達する。 胚盤胞の内部に存在する内細胞塊は、さらに原始外胚葉にあたる胚盤葉上層と、原始内胚葉(下胚葉)とに分化する。2 この分化イベントは、胚盤葉上層が将来の個体を構成するすべての組織および器官の源となるため、発生生物学において極めて重要なステップである。
発生学的な特徴として、胚盤葉上層は円柱上皮に似た形態を持つ一層の細胞集団として存在し、羊膜腔の床を形成する。 これに対し、反対側に位置する下胚葉(胚盤葉下層)は卵黄嚢の形成に関与する。 マウスなどのモデル生物およびヒトの初期胚解析において、胚盤葉上層の細胞は高い多能性を維持しており、ES細胞(胚性幹細胞)の株化の由来ともなる。3
原腸形成(Gastrulation)の時期になると、胚盤葉上層の細胞は形態的な大規模移動を起こし、原条と呼ばれる構造を形成する。 原条の位置において、胚盤葉上層の上皮系細胞は上皮間葉移行(EMT)を経て間葉系細胞様の性質を獲得し、内胚葉および中胚葉へと分化していく。 原条を通じて移動しなかった残りの胚盤葉上層細胞は、最終的に外胚葉(神経外胚葉および表皮外胚葉)へと運命づけられる。 このように、胚盤葉上層は三胚葉の起源となるだけでなく、前後軸や左右軸といった体軸の決定やパターン形成の中心的な場としても機能している。
参考文献・出典
- ライフサイエンス新着論文レビュー: https://first.lifesciencedb.jp/archives/18797 ↩
- Anatomical Society: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-7580.2010.01278.x ↩
- 日本発生生物学会: https://jsdb.jp/about/developmental-biology.html ↩