HEALTH WORDS / 用語解説
頭蓋内腫瘍
Intracranial Tumor
頭蓋内腫瘍とは、頭蓋骨の内部に発生する新生物(腫瘍)の総称であり、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に大別される。1
脳組織そのものや、脳室の脈絡叢、髄膜、脳神経、頭蓋骨、血管など、頭蓋内の多様な組織から発生する。2
発生部位や組織学的特徴によって、良性腫瘍と悪性腫瘍に分類される。3
頭蓋内腫瘍の疫学的特徴として、年齢層によって好発する腫瘍の種類が大きく異なる点が挙げられる。2
小児期には小脳や脳幹などのテント下発生が多く、髄芽腫や毛様細胞性星細胞腫などが比較的多く見られる。1
一方、成人期以降では大脳半球などのテント上発生が多くなり、膠芽腫などの神経膠腫(グリオーマ)や髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経鞘腫などの発生頻度が高くなる。2
頭蓋内腫瘍の病態生理における最大の特徴は、硬い頭蓋骨に囲まれた限られた空間内で腫瘍が発育・増殖することである。1
これにより、腫瘍自体の直接的な圧迫だけでなく、周囲の脳組織の浮腫(脳浮腫)や、脳脊髄液の循環障害に伴う頭蓋内圧亢進症状を引き起こす。3
頭蓋内腫瘍の臨床症状は、頭蓋内圧亢進症状と局所症状(神経症状)に大別される。1
頭蓋内圧亢進症状の代表的なものとしては、持続する頭痛、悪心・嘔吐、うっ血乳頭に起因する視力障害などが挙げられ、これらは朝方に強い傾向がある。2
局所症状は、腫瘍が発生した脳の部位(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、小脳、脳幹など)の機能障害を反映して現れる。1
例えば、運動野やその近傍に腫瘍が存在すれば反対側の運動麻痺や痙攣発作(てんかん)を生じ、言語野であれば失語症、視覚路であれば視野障害を引き起こす。2
また、下垂体腺腫などの内分泌器官近傍の腫瘍では、ホルモンの過剰分泌や欠乏による内分泌異常症状を呈することもある。1
頭蓋内腫瘍の診断においては、詳細な神経学的検査および身体診察を行った上で、画像検査が中心的な役割を果たす。3
磁気共鳴画像法(MRI検査)は、腫瘍の詳細な位置、大きさ、周囲の脳組織や血管との位置関係、脳浮腫の程度を評価するために不可欠である。2
コンピュータ断層撮影(CT検査)は、頭蓋骨の破壊や石灰化の評価、あるいは急性期の出血や頭蓋内圧亢進の緊急評価において有用である。1
さらに、陽電子放射断層撮影(PET検査)や脳血管撮影(アンギオグラフィー)が、腫瘍の悪性度評価や血行動態の把握のために補助的に用いられることがある。2
最終的な確定診断および組織学的分類には、外科的切除や生検によって得られた組織診が不可欠であり、世界保健機関(WHO)の分類基準に基づき悪性度が評価される。3
頭蓋内腫瘍の治療法は、腫瘍の組織型、悪性度、発生部位、患者の年齢や全身状態を総合的に考慮して選択される。1
主な治療法には、外科治療(開頭手術による腫瘍摘出術)、放射線治療、化学療法(薬物療法)がある。2
良性腫瘍や境界悪性腫瘍の場合、完全摘出により根治が期待できることが多い一方、膠芽腫などの悪性度の高い原発性脳腫瘍では、手術による最大限の安全な摘出を行った後に、放射線治療およびテモゾロミド等を用いた化学療法を組み合わせる集学的治療が標準的に行われる。3
近年では、定位放射線治療(ガンマナイフやサイバーナイフなど)や、分子標的薬、免疫療法などの新規治療法の開発・臨床応用が進められており、治療成績の向上が図られている。