HEALTH WORDS / 用語解説
超音波エラストグラフィ
Ultrasonic Elastography
超音波エラストグラフィとは、超音波を用いて組織の硬さ(弾性)を画像化し、診断に活用する非侵襲的な画像診断法である。1
生物学的組織は疾患によってその物性が変化することが知られており、特に悪性腫瘍や線維化を伴う病変では、周囲の健常組織と比較して硬度が上昇する傾向がある。1
従来の超音波検査におけるBモード画像では描出が困難であった組織の硬さの情報を視覚的および定量的に評価することを可能にした技術である。1
この技術の歴史的背景として、1990年代初頭に組織の弾性を画像化する試みが始まり、その後[[超音波装置のコンピュータ処理能力の向上やプローブの高性能化に伴い、臨床現場への普及が進んだ。2
現在では肝臓、乳房、甲状腺、前立腺など多様な臓器の評価に応用されており、臨床医学および生物学の領域において生検の回避や侵襲度の軽減に寄与している。1
超音波エラストグラフィの測定原理には、大きく分けて圧迫法(ひずみ法)と音響放射力(ARFI法など)を用いた剪断波(せん断波)エラストグラフィの2つのアプローチが存在する。1
圧迫法は、超音波プローブあるいは体内の拍動などを用いて組織に外力(圧迫)を加え、その際に生じる組織の変位の度合い(ひずみ)を解析する手法である。1
硬い組織は外力に対して変形しにくいためひずみが小さく、柔らかい組織はひずみが大きくなるという特性を利用して相対的な硬さをマッピングする。1
一方、剪断波エラストグラフィでは、音響放射力インパルス(ARFI)と呼ばれる超音波パルスの放射圧を組織の内部に瞬間的に照射し、組織内に横波である剪断波(せん断波)を発生させる。1
この剪断波の伝播速度は組織が硬いほど速くなるという物理的特性があるため、その速度を超音波で計測することで、組織の硬さをメートル毎秒(m/s)やキロパスカル(kPa)といった物理単位を用いて定量評価することが可能となる。1
肝疾患の領域においては、慢性肝炎や肝硬変における肝線維化の進行度を評価するための非侵襲的検査として極めて重要な位置を占めている。1
従来は肝生検によって組織を採取し病理学的に線維化ステージを診断する必要があったが、超音波エラストグラフィを用いることで患者の身体的負担を大幅に軽減しながら肝臓全体の硬度を測定できるようになった。1
乳腺領域においては、乳房腫瘤の良性・悪性鑑別において有用性が示されている。1
乳癌などの悪性腫瘍は周囲の乳腺組織や脂肪組織と比較して著しく硬いことが多く、エラストグラフィ画像上で腫瘤周囲に硬い領域が広がって描出される所見(ハロー状の変化や硬化環)は、悪性を強く示唆する所見の一つとして活用されている。1
また、甲状腺結節や前立腺癌の検出、関節や筋肉などの運動器における筋膜の滑走性や筋硬度の評価など、適用範囲は医学の多岐にわたる臨床分野に拡大している。1
このように、超音波エラストグラフィは音響物理学と臨床医学の融合によって発展した先進的な画像診断技術であり、形態学的な観察に加えて機能的・物性的情報を提供することで、現代医療における早期発見、正確な診断、および治療効果判定に大きく貢献している。1