HEALTH WORDS / 用語解説
遺伝的制御
Genetic control
遺伝的制御とは、生物における遺伝子の発現量を調節し、細胞の機能や状態を時間的および空間的に統御する生体内の仕組み全般を指す。1
生物のゲノムに存在するすべての細胞は原則として同一のDNA配列を持っているが、遺伝的制御によってどの遺伝子をいつ、どの程度転写・翻訳させるかが厳密に決定されている。2
この調節機構は原核生物から真核生物に至るまであらゆる生物に備わっており、細胞分化や個体発生、さらには環境の変化に対する適応応答において中心的な役割を果たしている。2
分子生物学的な観点において、遺伝的制御は転写の段階で行われることが最も一般的かつ重要である。転写因子と呼ばれるタンパク質がDNA上の特定の塩基配列(プロモーターやエンハンサーなど)に特異的に結合することで、RNAポリメラーゼによるmRNAの合成効率を正または負に調節する。1
さらに、原核生物におけるオペロン説に代表されるような代謝産物によるフィードバック制御から、真核生物におけるクロマチン構造のエピジェネティックな修飾に至るまで、多層的なシステムが存在している。ヒストンのアセチル化やDNAのメチル化といったエピジェネティクスに基づく変化は、遺伝子の物理的なアクセス性を変化させることで、長期的な遺伝的制御を可能にしている。1
近年の研究では、転写後レベルでの遺伝的制御の重要性も広く認識されている。マイクロRNAをはじめとする非コードRNAは、標的mRNAの翻訳を阻害したり分解を促進したりすることによって、遺伝子発現の微調整を担っている。1
このように、遺伝的制御はDNAからRNA、そしてタンパク質へと至る遺伝情報の発現プロセス全体にわたって幾重もの制御回路を形成することで、生命活動の恒常性を維持している。2