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HEALTH WORDS / 用語解説

エピジェネティック

Epigenetic

エピジェネティックとは、DNAの塩基配列の変化を伴うことなく、遺伝子の発現や細胞の機能が調節される仕組み、およびその変化を指す用語である。1

ヒトの身体を構成する多様な細胞は、すべて同一のゲノムDNA配列を共有しているにもかかわらず、神経細胞や皮膚細胞など、それぞれ異なる形態や機能を持っている。2

この異なる細胞への分化や多様な遺伝子発現の制御において、DNAの塩基配列自体を変えずに遺伝子の働きをオン・オフのスイッチのように調節するシステムがエピジェネティックな機構である。2

代表的なエピジェネティックな修飾メカニズムとしては、DNAの塩基へのメチル基の付加(DNAメチル化)や、DNAが巻き付いているヒストン蛋白質のアセチル化やメチル化などの化学修飾が挙げられる。1

DNAメチル化は、主にシトシン塩基にメチル基が結合する現象であり、多くの場合において遺伝子の転写を抑制する方向に働く。2

一方、ヒストン修飾は、ヌクレオソームを構成するヒストン蛋白質の末端のアミノ酸残基に対して様々な化学修飾がなされることで、クロマチン構造の凝縮度を変化させ、転写因子やRNAポリメラーゼなどの因子がDNAへアクセスしやすい状態あるいはしにくい状態を作り出す。1

これらのエピジェネティックな変化は、細胞分裂を通じて娘細胞へと受け継がれる性質(有系分裂記憶)を持っており、個体の発生や組織の恒常性維持において極めて重要な役割を果たしている。2

さらに、エピジェネティックな状態は、遺伝子配列という固定的な情報とは異なり、加齢や環境因子(食事、ストレス、化学物質への曝露など)によって後天的に変動するという特徴がある。1

このため、環境と遺伝子の相互作用を解明する上でエピジェネティックな研究は中心的な位置を占めており、近年のライフサイエンス分野において活発に解析が進められている。2

近年の研究によって、癌などの疾患の発生や進展においても、遺伝子の変異だけでなく、エピジェネティックな異常(特定の癌抑制遺伝子の異常なDNAメチル化による不活化など)が深く関与していることが明らかにされている。1

こうした分子レベルの異常が疾患の原因となることから、エピジェネティックな変化を標的とした薬剤(DNAメチル化酵素阻害薬やヒストン脱アセチル化酵素阻害薬など)の開発や臨床応用が進みつつある。2

参考文献・出典

  1. 文部科学省: https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/gijyun/gijyutuan/04121502/004.htm ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 国立研究開発法人科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120224/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6