HEALTH WORDS / 用語解説
骨盤底
Pelvic floor
骨盤底とは、骨盤の最下部に位置し、ハンモック状あるいは漏斗状に連続して骨盤内臓器を下方から支える筋群、筋膜、靭帯などの総称である。1
骨盤底を構成する主要な筋肉として、恥骨直腸筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋からなる肛門挙筋があり、これに尾骨筋などが加わることで強固な底構造を形成している。1
骨盤底に存在する筋肉群は、腹腔内の圧力である腹圧の変化や重力に対抗しながら、膀胱、子宮、直腸といった骨盤内臓器が体外へ脱落しないように適正な位置へと支持する極めて重要な役割を担っている。1
さらに、骨盤底は尿道、膣、肛門などの開口部をとりまく括約筋としての機能も有しており、排尿、排便、分娩などの生体機能において随意筋および不随意筋の両面から精緻な調節に関与している。1
しかし、加齢に伴う組織の脆弱化をはじめ、妊娠や分娩時の機械的ストレス、肥満、慢性的な便秘による持続的な腹圧の上昇などが原因となって、骨盤底を支持する筋肉や結合組織に損傷や機能障害が生じることが知られている。1
骨盤底の支持組織が破綻あるいは弛緩することによって引き起こされる代表的な病態には、膀胱や子宮などの臓器が膣から下降・脱出する骨盤臓器脱があり、中高年女性において高い頻度で発症する。1
また、骨盤底筋群の機能低下や神経障害は、腹圧性尿失禁をはじめとする各種の尿失禁や排便障害の主たる原因の一つとなり、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となる。1
このような骨盤底に起因する諸症状の予防および改善を目的として、骨盤底筋群を意識的に収縮および弛緩させる運動療法である骨盤底筋体操(骨盤底筋トレーニング)が広く臨床現場で推奨されている。1
解剖学的および生理学的な観点からも、骨盤底は体幹の深層筋である腹横筋や横隔膜、多裂筋などと協調して腹腔内圧を制御し、姿勢保持や脊椎の安定性に寄与するコアシステムの一部としても重要な生理機能を果たしている。2