HEALTH WORDS / 用語解説
C-RAF
C-RAF
C-RAFとは、細胞の増殖、分化、生存に関与するRafキナーゼファミリーのセリン・スレオニンキナーゼの一つであり、RAF1とも呼ばれる遺伝子およびそのタンパク質産物である。1
C-RAFはRAS下流のシグナル伝達経路であるMAPK/ERK経路(Raf-MEK-ERKカスケード)において中心的な役割を果たしており、細胞外シグナルを細胞核へと伝達するプロテインキナーゼとして機能する。2
ヒトにおいてC-RAFをコードするRAF1遺伝子は3番染色体の短腕(3p25)に位置しており、がんをはじめとする様々な疾患や先天性疾患との関連が研究されている。1
C-RAFを含むRafキナーゼファミリーには、ほかにARAFおよびBRAFが存在し、それぞれ異なる組織分布やキナーゼ活性を示すことが知られている。2
細胞膜上の受容体が増殖因子などのリガンドによって刺激されると、GTP結合タンパク質であるRASが活性化され、これが細胞質に存在するC-RAFを細胞膜へとリクルートする。3
細胞膜上でC-RAFは、リン酸化やタンパク質間相互作用などの複雑な翻訳後修飾を経て活性化され、下流のMEK1およびMEK2をリン酸化して活性化する。1
さらにMEKはERK(ERK1/2)をリン酸化し、活性化されたERKは細胞核へ移行して転写因子をリン酸化することで、細胞周期の進行や細胞増殖に関わる遺伝子群の発現を誘導する。2
このように、C-RAFは細胞の正常な生理機能を維持するためのシグナル伝達ネットワークにおいて不可欠な分子スイッチとして働いている。1
一方で、RAF1遺伝子の変異や染色体転座、あるいはMAPK/ERK経路の異常な活性化は、腫瘍の形成や癌化の原因となることが広く知られている。2
特にヌーナン症候群(Noonan syndrome)や豹皮症候群(LEOPARD syndrome)といった先天性疾患においては、RAF1遺伝子の生殖細胞系列変異が原因の一つとして同定されており、心筋症や顔面異形などの臨床症状を引き起こすことが示されている。1
また、悪性腫瘍の分野においても、C-RAFは分子標的薬の標的分子あるいは薬剤耐性に関与する因子として盛んに解析が行われており、がん治療における重要な研究対象となっている。2
参考文献・出典
- Entrez Gene: RAF1 RAF proto-oncogene serine/threonine kinase [Homo sapiens (human)] - Gene - NCBI: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/5894 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- RAF1 Gene - GeneCards | RAF1 Protein | RAF1 Antibody: https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=RAF1 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- RAF1 Gene - GeneCards | RAF1 Protein | RAF1 Antibody: https://www.genecards.org/cgi-bin/cardidi.pl?gene=RAF1 ↩