HEALTH WORDS / 用語解説
DNA glycosylase
DNAグリコシラーゼ
DNA glycosylaseとは、DNA修復機構の一つである塩基除去修復(BER)の初期段階において、DNA中の損傷を受けた塩基または不適正な塩基を認識し、塩基と糖-リン酸骨格のデオキシリボースとの間のN-グリコシド結合を特異的に加水分解して遊離させる酵素の総称である。12
DNAは、活性酸素種や紫外線、電離放射線などの環境因子、あるいは細胞内の代謝産物によって常に攻撃を受けており、塩基の酸化、アルキル化、脱アミノ化、塩基の消失(アバシックサイトの形成)といった多様なDNA損傷が引き起こされる。31
これらの損傷を放置すると、転写阻害や複製のエラーを引き起こし、突然変異や細胞死、さらにはがん化などの深刻な病態につながるため、速やかな修復が必要となる。3
塩基除去修復(BER)経路において、DNA glycosylaseは極めて重要な役割を担っており、変異や損傷を受けた特定の塩基を見つけ出して切断する。12
多くのDNA glycosylaseは、損傷塩基をDNAの二重螺旋構造の外側へとフリップアウト(翻転)させることで、自身の活性中心へと正確に導き入れ、触媒反応を進行させる。12
DNA glycosylaseによってN-グリコシド結合が切断され、塩基が除去された跡地には、塩基脱落部位(APサイト、アバシックサイト)と呼ばれる糖-リン酸骨格の断裂部が残される。12
このAPサイトに対して、一部のDNA glycosylaseは自身が持つAPリヤージェース(APアンレギュレーター)活性やリアーゼ活性を介して糖-リン酸骨格の切断を続けて行うものも存在するが、多くの場合は引き続いてAPエンドヌクレアーゼが作用して骨格を切断する。12
その後、DNAポリメラーゼによるDNA鎖の合成(ギャップ埋め)と、DNAリガーゼによるニックの封入を経て、正常なDNA配列へと完全に修復される。12
ヒトをはじめとする真核生物や原核生物には、それぞれ異なる損傷の種類に対応するため、多種類のDNA glycosylaseが存在している。12
代表的なものとして、ウラシルがDNAに誤って取り込まれたりシトシンが脱アミノ化して生じたりした際に働くウラシル-DNAグリコシラーゼ(UNG)がある。12
また、活性酸素によってグアニンが酸化されて生じる8-オキソグアニンを特異的に認識して除去するOGG1(8-oxoguanine DNA glycosylase 1)などもよく知られている。12
さらに、アルキル化剤によってDNAの塩基がアルキル化された際に働く3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼ(Magなど)や、チミジンの酸化損傷に対処する酵素群なども発見されている。((J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=20090705597956637
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907055979566373 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
- NBDC グライコデータベース: https://togodb.biosciencedbc.jp/glycodb/glyco_enzyme/glyco_enzyme_detail?id=1295 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
- 国立がん研究センター 研究所: https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/cancer_cell_biology/index.html ↩1 ↩2