HEALTH WORDS / 用語解説
MELK
MELK(Maternal embryonic leucine zipper kinase)とは、主として細胞分裂や細胞周期の調節に関与するセリン・トレオニンキナーゼの一種であり、哺乳類の胚発生や腫瘍の進展において重要な役割を果たしているタンパク質キナーゼである。1 分子生物学の分野において、本酵素はキナーゼファミリーに属し、様々なリン酸化反応を介して下流のシグナル伝達経路を制御することが知られている。2
MELKはヒトにおいてMELK遺伝子によってコードされており、その発現は正常な組織においては造血幹細胞や前駆細胞などの限られた細胞群でのみ認められる。1 しかしながら、多くの悪性腫瘍やがん細胞株においては、MELKの異常な遺伝子発現の上昇が頻繁に観察される。3 この過剰発現は、腫瘍細胞の増殖能、生存率、および浸潤能の亢進と強く相関しているため、分子標的薬の開発における重要な治療標的としての注目を集めている。1
細胞周期の制御において、MELKは有糸分裂(M期)の進行に不可欠な役割を果たしている。1 特に、中心体の成熟や紡錘体の形成、さらには細胞質分裂のプロセスにおいて中心的な機能を担っており、これらの細胞分裂の諸段階が正常に行われるための分子的基盤を提供している。2 そのため、MELKの機能が阻害されると、細胞はアポトーシス(プログラムされた細胞死)や細胞周期停止を引き起こし、結果として細胞増殖が著しく抑制されることとなる。1
近年のがん研究および腫瘍学の進展に伴い、MELK特異的な阻害剤を用いた薬物療法の可能性に関する前臨床研究が世界各地で積極的に進められている。乳がん、膠芽腫、前立腺がんなどの難治性腫瘍において、MELKの発現量が高い患者は予後不良である傾向が指摘されており、本分子を標的とした治療法の確立は、臨床医学および創薬の分野において極めて重要な課題となっている。3
参考文献・出典
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/10218 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- UniProt: https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q14680/entry ↩1 ↩2
- Protein Atlas: https://www.proteinatlas.org/ENSG00000165349-MELK/pathology ↩1 ↩2