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HEALTH WORDS / 用語解説

PLCγ2

Phospholipase C gamma 2

PLCγ2とは、哺乳類の細胞内シグナル伝達において重要な役割を果たす酵素であるホスホリパーゼCアイソフォームの一つである。1

PLCγ2は、主に免疫系の細胞、特にB細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞などの造血系細胞において高く発現している。2

B細胞受容体(BCR)やFc受容体などの受容体型チロシンキナーゼや非受容体型チロシンキナーゼが活性化されると、PLCγ2は細胞膜へとリクルートされる。1

細胞膜上に移行したPLCγ2は、上流のキナーゼによってリン酸化されることで活性化され、細胞膜の構成成分であるホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)を加水分解する。3

この加水分解反応によって、イノシトール三リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)という2種類の重要な二次メッセンジャーが産生される。1

産生されたIP3は小胞体上のIP3受容体に結合し、細胞質内へカルシウムイオン(Ca2+)を急速に放出させる。4

細胞内カルシウム濃度の上昇は、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼなどの下流分子を活性化し、免疫細胞の増殖、分化、活性化、抗体産生などの多様な細胞応答を引き起こす。1

一方で、DAGはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化し、これもシグナル伝達カスケードの増幅に寄与する。1

ヒトにおいてPLCγ2をコードする遺伝子はPLCG2であり、この遺伝子の変異は様々な疾患との関連が指摘されている。5

例えば、PLCG2遺伝子の機能獲得型変異は、免疫異常や炎症性疾患を引き起こすことが知られており、寒冷じんましんや自己免疫疾患を伴うPLAID(PLCG2-associated antibody deficiency and immune dysregulation)などの原発性免疫不全症の原因となる。6

また、別の変異や多型は、アルツハイマー病などの神経変性疾患や自己免疫疾患である関節リウマチの発症リスクあるいは病態に関与していることがゲノムワイド関連解析(GWAS)などによって報告されている。7

このように、PLCγ2は免疫応答の制御において不可欠な分子であるだけでなく、免疫不全、自己免疫疾患、神経変性疾患などの病態解明や創薬ターゲットとしても重要な研究対象となっている。5

参考文献・出典

  1. KEGG PATHWAY: hsa04662: B cell receptor signaling pathway - Homo sapiens (human): https://www.kegg.jp/pathway/hsa04662 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. The Human Protein Atlas: PLCG2: https://www.proteinatlas.org/ENSG00000197943-PLCG2 ↩
  3. 日本生化学会 生化学用語データベース: PLCγ2: https://glossary.biochemistry.jp/ ↩
  4. 日本生化学会 生化学用語データベース: IP3受容体: https://glossary.biochemistry.jp/ ↩
  5. NCBI Gene: PLCG2 phospholipase C gamma 2 [Homo sapiens]: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/5336 ↩1 ↩2
  6. 遺伝医学研究会 臨床遺伝学データベース: PLCG2関連疾患: https://www.jsmg.org/ ↩
  7. Alzforum: PLCG2: https://www.alzforum.org/mutations/plcg2 ↩