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HEALTH WORDS / 用語解説

d抗原

d抗原とは、ヒトの赤血球表面に存在するRh血液型系における主要な抗原の一つであり、歴史的にはRh因子の陰性を決定づける重要な指標として研究されてきた概念である。1

Rh血液型には複数の抗原が含まれており、その中でも臨床的に最も重要視されるのはD抗原である。一般的に「Rhプラス」や「Rhマイナス」と表現される場合の判定は、主にD抗原の有無によって行われる。1

これに対して、歴史的あるいは一部の血清学的な文脈において、大文字のD抗原に対する対立遺伝子産物や、対応する抗体が存在するかという議論の中で「d」という小文字が用いられてきた経緯がある。しかし、分子生物学的および遺伝子的な解析が進むにつれて、大文字のD抗原に対応する古典的な意味での「d抗原」という実体は存在しないことが明らかにされている。2

Rh血液型のD遺伝子(RHD遺伝子)の欠失や変異によってD抗原が赤血球上に発現しない状態が、いわゆるRhマイナスの血液型となる。つまり、「d抗原が陽性である」という表現や「d抗原を持つ」という状態は遺伝子的・免疫学実体としては存在せず、D抗原が欠損している状態を便宜上「d」と小文字で表現してきたにすぎない。2

輸血や妊娠の管理においては、D抗原の有無が免疫的な抗体産生を引き起こすかどうかの判断基準となる。D抗原を持たないRhマイナスの個体がD抗原を持つ血液に曝露されると、抗D抗原抗体を産生するリスクが生じるため、輸血療法や周産期医学の領域において血液型判定と抗体スクリーニングが厳格に実施される。1

このように、学術的および臨床医学的な実務においては「d抗原」という独立した物質が存在するわけではなく、あくまでD抗原の不存在あるいはRHD遺伝子の欠損状態を示すための便宜的な記号として理解されている。輸血用血液の確保や安全管理体制の構築にあたっては、こうした血清学および分子生物学に基づく正確な知識が不可欠である。2

参考文献・出典

  1. 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndl/pid/11234978/www.mhlw.go.jp/houdou/2008/04/h0421-1.html ↩1 ↩2 ↩3
  2. J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji1950/45/6/45_6_453/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2 ↩3