HEALTH WORDS / 用語解説
p57kip2
p57Kip2
p57kip2とは、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の阻害因子であり、細胞周期の進行を負に制御するタンパク質をコードする遺伝子、およびその翻訳産物である。1 ヒトにおいてはCDKN1C遺伝子として知られており、細胞増殖の抑制やアポトーシスの誘導において重要な役割を果たす。2
p57kip2は、細胞周期のG1期においてサイクリンE-CDK2やサイクリンD-CDK4などのサイクリン依存性キナーゼ複合体に結合し、そのキナーゼ活性を強力に阻害することで細胞周期を停止させる。1 これにより、過剰な細胞分裂を防ぎ、組織の恒常性維持や細胞分化の誘導に寄与している。1
分子生物学的な特徴として、p57kip2はCip/Kipファミリーに属するタンパク質の一つである。1 同ファミリーにはp21CIP1やp27KIP1が含まれるが、p57kip2はN末端側にCDK阻害ドメインを持ち、C末端側にはプロリンに富む独特なドメインを有しているという構造的な差異が存在する。1
遺伝学的な観点では、ヒトのCDKN1C遺伝子は11番染色体の短腕(11p15.5)に位置しており、インプリンティング遺伝子(刷り込み遺伝子)として知られている。2 通常、父親由来の対立遺伝子はメチル化などによりエピジェネティックに不活性化されており、主に母親由来の対立遺伝子から発現する母性発現遺伝子である。1
このインプリンティングの異常やCDKN1C遺伝子の変異は、様々な疾患の発症に関与している。2 代表的な疾患として、過成長や臍帯ヘルニアなどを特徴とする先天性の過成長症候群であるベックウィズ・ヴィーデマン症候群(Beckwith-Wiedemann syndrome)が挙げられ、同症候群の主要な原因遺伝子の一つとしてCDKN1Cの変異やエピミュテーションが同定されている。2
また、p57kip2はがん抑制遺伝子としての側面も持っており、その発現低下や機能喪失が様々な悪性腫瘍の発がんや腫瘍増悪に関与していることが示されている。1 特に胎児性腫瘍や胞状奇胎などの病理組織学的な診断においても、免疫組織化学染色を用いたp57kip2の発現解析が重要な鑑別診断マーカーとして臨床現場で活用されている。1