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HEALTH WORDS / 用語解説

アミロイド前駆蛋白

Amyloid Precursor Protein

アミロイド前駆蛋白とは、さまざまな細胞の細胞膜上に発現している1回膜貫通型の糖蛋白であり、アルツハイマー病の病態において中心的な役割を果たすアミロイドβ蛋白の前駆体分子である。1

アミロイド前駆蛋白(APP)は遺伝子によってコードされており、ヒトでは第21番染色体に遺伝子座が存在している。2

この蛋白質は中枢神経系をはじめとする全身の組織において広く発現しており、神経細胞の成長や生存維持、シナプス形成、細胞接着などの多様な生理学的機能に関与していることが示唆されている。

アミロイド前駆蛋白の体内での代謝経路には、主に2つの異なる酵素による切断様式が存在している。

1つ目は非アミロイドogenic経路と呼ばれるものであり、アルファセクレターゼと呼ばれる酵素によって細胞膜付近で切断される。

この経路によって切断された場合には、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβ蛋白の産生が回避され、むしろ神経保護作用を持つとされる可溶性APPαが細胞外へと放出される。

2つ目はアミロイドogenic経路であり、まずベータセクレターゼ(BACE1)によって細胞外ドメインが切断され、続いてガンマセクレターゼという複合体酵素によって膜内領域が切断される。

この2段階のタンパク質分解を経ることによって、約39から43個のアミノ酸から構成されるアミロイドβ蛋白が遊離して生成されることになる。

生成されたアミロイドβ蛋白は、特にアミロイドβ42などの特定のアイソフォームにおいて凝集性が極めて高く、単量体からオリゴマー、そして不溶性の線維状凝集体へと変化していく性質を持っている。

このアミロイドβ蛋白の異常な蓄積および凝集が、脳内における神経細胞死や炎症反応を引き起こす主要なトリガーとなり、アルツハイマー病特有の老人斑形成へとつながっていくと考えられている。3

また、ダウン症候群の患者においては第21番染色体がトリソミーとなっているため、アミロイド前駆蛋白の遺伝子ドクターコピー数が正常よりも増加し、結果としてアミロイド前駆蛋白の発現量が上昇する。

これが原因となり、ダウン症患者では若年層のうちから脳内にアミロイドβ蛋白が蓄積しやすくなり、高頻度でアルツハイマー病様の認知機能低下を発症することが知られている。2

このように、アミロイド前駆蛋白は基礎生物学の分野における細胞膜受容体としての機能解析だけでなく、神経変性疾患の予防や治療薬開発のターゲットとしても極めて重要な生体分子の一つである。

参考文献・出典

  1. 独立行政法人科学技術振興機構J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/43/4/43_4_368/_pdf ↩
  2. 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11611726/www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/420-down-intro.html ↩1 ↩2
  3. 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12316447/www.mhlw.go.jp/content/10900000/000910769.pdf ↩