HEALTH WORDS / 用語解説
アンジオテンシン-(1-7)
1-7
アンジオテンシン-(1-7)とは、レニン-アンジオテンシン系(RAS)において生成される、7つのアミノ酸からなるペプチドであり、主に血管拡張や抗炎症作用などの生体防御的な役割を担う生理活性物質である。1
従来、レニン-アンジオテンシン系の中心的な生理作用は、血圧上昇や血管収縮を促すアンジオテンシンIIとその受容体を介した経路が主であると考えられてきた。1
しかし、近年ではアンジオテンシンIIから特定の酵素による代謝を受けて生成されるアンジオテンシン-(1-7)が発見され、従来のレニン-アンジオテンシン系に対するカウンター調節系として機能していることが明らかにされている。1
体内でアンジオテンシン-(1-7)が産生される主な経路としては、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素がアンジオテンシンIIに直接作用し、1つのアミノ酸を切り離すことで生成される経路が知られている。2)
また、アンジオテンシンIから別の経路を経て生成されることもあり、体内の様々な組織や血液中で常に一定のバランスを保ちながら産生と分解が繰り返されている。1
アンジオテンシン-(1-7)が細胞レベルで生理作用を発揮するためには、特異的な受容体であるMas受容体に結合する必要があることが研究によって示されている。2)
このMas受容体を介したシグナル伝達系が活性化されると、一酸化窒素(NO)の産生促進などを通じて、血管平滑筋の弛緩や血圧低下が引き起こされる。1
これは、血管収縮や組織線維化を促進するアンジオテンシンIIの作用と拮抗する働きであり、心血管系の恒常性維持において極めて重要なバランスを形成している。1
さらに、アンジオテンシン-(1-7)およびMas受容体の経路は、単なる血圧調整にとどまらず、抗炎症作用、抗酸化作用、抗増殖作用など多岐にわたる保護的な生理活性を持つことが報告されている。1
例えば、腎臓や心臓などの臓器において、細胞のアポトーシスを抑制したり、過剰な線維化を防いだりする効果が期待されており、各種疾患の病態生理との関連性が盛んに研究されている。1
臨床医学や薬理学の分野においては、アンジオテンシン-(1-7)の作用機構や、その受容体を標的とした創薬研究が進められており、高血圧、心不全、腎疾患などの新しい治療薬開発に向けた応用が期待されている。1