HEALTH WORDS / 用語解説
一酸化窒素
nitrogen monoxide
ひとつの窒素原子とひとつの酸素原子が結合した化合物。常温で気体。分子式は NO
半減期は3〜6秒であり、すぐに硝酸イオンや亜硝酸イオンに変化する。水より脂に6倍溶けやすく、細胞膜内外を自由に移動できる。1
動脈血管を広げて血圧を下げる降圧作用があり、狭心症(狭心痛)や心筋梗塞の治療に利用される。この作用は血管平滑筋の細胞内にあるグアニル酸シクラーゼを活性化してcGMPの生成を促進することによる。23
体内では血管内皮細胞において、アルギニンから一酸化窒素合成酵素(NO合成酵素)の働きによって生成される。また、ニトログリセリンがミトコンドリアで代謝されることでも発生する。副鼻腔からも産生されるため、呼気に多く含まれる。4
一酸化窒素作動性神経における神経伝達物質となる。
抗菌作用や抗腫瘍作用もあるが、活性酸素でもあるため大量に放出されると発がんを促進するとされる。マクロファージは病原体の排除に一酸化窒素を利用する。活性化されてiNOSを発現したマクロファージが細胞質基質に産生し、細胞内寄生性細菌の排除に寄与する。567
一酸化窒素が脳内の局所で多量あるいは持続的に産生すると、変性を起こしたタンパク質が蓄積し、神経細胞が死滅することが確認されている。これは、小胞体ストレス応答に関わるIRE1αを酸化することで酵素活性を阻害し、ストレスへの抵抗が抑制されることが原因と考えられている。
一酸化窒素は、タンパク質成熟に必須な酵素であるジスルフィド異性化酵素を酸化(ニトロシル化)して、酵素活性を阻害することで未成熟な変性タンパク質を蓄積させます。本タンパク質酸化体はパーキンソン病やアルツハイマー病のヒト死後脳でも検出され、これまでに病態発症との因果関係が指摘されてきました(上原ら Nature 2006)。8
参考文献・出典
- 一酸化窒素合成酵素の構造と機能 とくに血管組織における動態と意義 筒井正人 上野晋 豊平由美子 柳原延章: http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2002&number=4715&file=zaq/Y8TuPLUSbbWqmzKGOa8IA== ↩
- 技術評論社 山中建生 知りたいサイエンス 地球とヒトと微生物 身近で知らない驚きの関係 ↩
- (株)化学同人 京都大学大学院薬学研究科 くすりをつくる研究者の仕事 薬のネタ探しから私たちに届くまで 2017/3/30 ↩
- 日本鼻科学会会誌 鼻腔抵抗値とVisual analogue scaleにより評価した鼻閉感: http://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/2004156153.pdf?file_id=1459 ↩
- ガンとマクロファージ | 統合医療臨床情報センター: http://npo-imc.or.jp/component/macrophage/ ↩
- 光でガス分子を自在に取り出せる空間材料を開発 -記憶形成・血管拡張など、細胞内NOガスの謎を知るカギに- — 京都大学: http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131025_3.htm ↩
- 細胞内寄生菌感染症と免疫応答 光山正雄(京都大学大学院医学研究科・感染・免疫学教授): http://www.saitama-med.ac.jp/jsms/vol30/01/30_080_090.pdf ↩
- 一酸化窒素による神経細胞死の機構を解明 - 国立大学法人 岡山大学: http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id340.html ↩