HEALTH WORDS / 用語解説
コイルドコイル
Coiled-coil
コイルドコイルとは、2つ以上のアルファヘリックスが互いに巻きついてロープ状の構造を形成する、タンパク質の二次構造のモチーフである。1
コイルドコイル構造は、約7残基を周期とする「ヘプタッドリピート(heptad repeat)」と呼ばれるアミノ酸配列の規則的な繰り返しによって特徴づけられる。2
このヘプタッドリピートは一般に「(abcdefg)_n」と表され、1番目の位置(a)と4番目の位置(d)にはロイシンやイソロイシンなどの疎水性アミノ酸が高度に保存されている。2
ペプチド鎖がアルファヘリックスを形成すると、これら疎水性アミノ酸の側鎖はヘリックスの片側に面して「疎水性面」を作り出す。2
複数(通常は2〜5本)のアルファヘリックスが互いに寄り添う際、それぞれの疎水性アミノ酸側鎖が噛み合わせるようにしてパッキングし、水に満ちた細胞内環境から隔離された安定な疎水性コアを形成する。1
さらに、ヘプタッドリピートの5番目(e)や7番目(g)の位置には荷電アミノ酸が現れることが多く、これらが分子間で静電相互作用(塩橋)を形成することで、タンパク質複合体の立体的な特異性や安定性をさらに高めている。2
このように疎水性相互作用と静電相互作用が協調して働くことにより、極めて強固で安定した繊維状あるいは束状の構造が維持される。1
自然界におけるコイルドコイルは、構造タンパク質やモータータンパク質、転写因子など、多様なタンパク質の機能発現において重要な役割を果たしている。2
例えば、筋肉組織を構成するミオシンや、細胞骨格を形作るケラチン、ビメンチンといった線維状タンパク質には、このコイルドコイル構造が豊富に含まれており、組織の機械的な強度や弾性を支えている。1
また、真核生物の転写因子に見られる「ロイシンジッパー」と呼ばれるドメインも、コイルドコイル構造の一種であり、DNAへの特異的な結合や二本鎖のタンパク質複合体形成(二量体化)に深く関与している。2
さらに、細胞内の小胞輸送におけるシナプス小胞の膜融合を仲介するSNAREタンパク質群や、ウイルスが宿主細胞膜に侵入する際の膜融合プロセスにおいても、コイルドコイルのダイナミックな構造変化が不可欠な役割を担っている。1