HEALTH WORDS / 用語解説
ジヒドロプテロアートシンターゼ
Dihydropteroate synthase
ジヒドロプテロアートシンターゼとは、細菌などの微生物が葉酸を合成する際に不可欠な初期の段階を触媒する酵素である。1
この酵素は、パラアミノ安息香酸(PABA)と6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリンピロホスフェートを基質として反応を進め、ジヒドロプテロ酸を生成する。2
葉酸はDNAの塩基合成をはじめとする炭素1個の転移反応(1炭素代謝)において補酵素として働くため、細胞の増殖や生存に必須の物質である。1
多くの哺乳類などの動物は、体内で葉酸を合成する能力を持たず、食事などから摂取する経路に依存している。1
一方で、細菌の多くは細胞内で葉酸を自ら合成する必要があるため、この経路に関与するジヒドロプテロアートシンターゼは抗菌薬の重要な標的分子となる。2
サルファ剤(スルホンアミド系抗菌薬)は、パラアミノ安息香酸と構造が類似しているため、ジヒドロプテロアートシンターゼに対して競合阻害剤として作用する。1
これにより、酵素の活性が抑制されて細菌の葉酸合成が阻害され、結果としてDNAの合成やタンパク質の合成が妨げられて細菌の増殖が抑えられる。1
しかしながら、臨床の現場や自然環境においては、ジヒドロプテロアートシンターゼをコードする遺伝子の変異や、プラスミドなどを介した薬剤耐性遺伝子の獲得によって、サルファ剤に対する耐性を獲得した細菌が出現することが知られている。2
参考文献・出典
- KEGG PATHWAY: map00790 - Folate biosynthesis - Reference pathway: https://www.kegg.jp/pathway/map+map00790 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- Enzyme Commission: EC 2.5.1.15: https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?ec:2.5.1.15 ↩1 ↩2 ↩3