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HEALTH WORDS / 用語解説

合成抗菌薬

Synthetic antibacterial agents

合成抗菌薬とは、微生物が産生する物質ではなく、化学的合成手法によって人工的に製造され、細菌の増殖を抑制あるいは死滅させる薬剤の総称である。1

広義には抗生物質の一部として扱われることもあるが、厳密にはペニシリンなどのように天然の微生物から分離・抽出された代謝産物やその化学的半合成品とは異なり、その全体が化学的プロセスを経て一から構築される点を特徴とする。2

歴史的に見ると、合成抗菌薬の発展はサルファ剤の発見に端を発する。2 1930年代初頭にドイツのゲルハルト・ドマークらがプロントジルという赤色染料が溶血性レンサ球菌感染症に対して治療効果を示すことを見出し、これが体内で代謝されてスルファニルアミドという有効成分を遊離することを解明した。2

このサルファ剤の発見は、化学療法の可能性を劇的に広げ、その後の様々な合成抗菌薬の開発における大きな原動力となった。2

その後、1960年代にはナリジクス酸が発見され、これを母核として改良が重ねられることで、より強力な抗菌スペクトルと優れた体内動態を持つニューキノロン系抗菌薬(キノロン系合成抗菌薬)へと発展した。2

合成抗菌薬の作用機序は多岐にわたるが、その多くは細菌の生存や増殖に不可欠な特定の生合成経路や酵素の働きを特異的に阻害することにある。1

例えば、サルファ剤は細菌が葉酸を合成する際に必須であるジヒドロプテロアートシンターゼという酵素を競合的に阻害し、結果としてDNAやRNAの合成に必要な核酸の産生を断つことで静菌的に働く。1

また、ニューキノロン系などの合成抗菌薬は、細菌のDNA複製において重要な役割を果たすDNAジャイレースやトポイソメラーゼIVといった酵素の活動を阻害し、DNAの複製や転写を妨げることで殺菌的な効果を発揮する。1

これらの薬剤は、医療現場において尿路感染症や腸管感染症をはじめとする様々な細菌感染症の治療に広く用いられてきた。2

しかしながら、合成抗菌薬を含む抗菌薬の不適切な使用や過剰投与は、薬剤耐性(AMR)を持つ耐性菌の出現を促す重大な要因として国際的な問題となっている。3

耐性菌の出現メカニズムとしては、ターゲットとなる酵素の遺伝子変異による親和性の低下や、薬剤を細胞外へ能動的に排出する efflux pump(排出ポンプ)の発達などが挙げられる。2

このような背景から、適正使用(スチュワードシップ)の推進が強く叫ばれており、感染症学的な診断に基づいた適切な薬剤選択と投与量・投与期間の遵守が求められている。3

政府機関や学術団体では、薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなどを策定し、医療従事者および一般市民に対する啓発活動を行いながら、新規の合成抗菌薬の開発と既存薬のモニタリングを継続的に実施している。3

参考文献・出典

  1. 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/files/000213197.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/dig/siken/chosa/chosa26/26_6.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
  3. 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001158589.pdf ↩1 ↩2 ↩3